水回り

給湯器を考える

日本の家庭において住宅の省エネを考える時の順番はまず給湯器。

お湯を如何に上手に作るか、貯めるか、使うか。

それを考えなければなりません。

省エネの真の敵とは?

皆さん冷房や暖房が省エネの大敵と思われてますが、

実は日本人が大好きなお風呂こそが、日本の家庭の省エネの敵だったのですね。

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最近でこそ全館空調などが世の中に普及して暖房や冷房の割合が増えてきました。

そのうち日本でも給湯よりも暖房の方がエネルギーを使う社会になると思います。

そうなると、更に断熱の重要性が増しますので、それはそれで歓迎なのですが。

で、本日は給湯器についてのお話しです。

現在使われている給湯器の種類

日本で住宅を建てるにあたり、選べる給湯器はこの10年で少し変化しました。

安定して採用されているエコジョーズ・エコキュートの他にも、

家庭に発電所を作るイメージのエネファーム、

最近になって注目されてきたエコワン、

条件がハマれば省エネ効果が最高の太陽熱温水システムなど

初めて勉強する方にとっては非常に分かりづらいラインナップになっております。

なので、一旦ここで選べる給湯器の特徴と、適した生活スタイル、

組み合わせの良し悪しについてまとめてみました。

※クリックすると大きくなります。

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私に最適な給湯器はどれ?

よく聞かれるのが「どれが省エネなんですか?」です。

これ非常に回答が難しくて、答えは「どんな生活をするかによる」なんです。

生活のスタイルによってはエコジョーズが初期投資の安さを生かして

トータルコストも逃げきる可能性がありますし、

エネファームが圧倒的な削減効果を発揮して最安になる可能性もあります。

折に触れてお伝えしておりますが「何が最高か」ではなく「何が最適か」です。

では、表だけでは分かりにくいかと思いますので、一つずつ解説していきます。

エコジョーズ

まずはエコジョーズ

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従来のガス給湯器ですとガスの燃焼温度約1000℃のうち800℃くらいをお湯に伝え、

200℃くらいは無駄に捨てておりました。その200℃を使って水を予熱することで

更に効率を高めた設備です。

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エコジョーズの方が配管が長いのが分かると思います。これがポイントですね。

2018年現在、新しくするガス給湯器はほぼエコジョーズに

切り替わっているはずなのですが、一部の不勉強な業者さんによって未だに

従来タイプの物も販売されております。こちらは、どう頑張ってもエコジョーズの

方が省エネになりますので、結露水の排水が取れないなどの理由がない限りは

従来型よりはエコジョーズを選ぶべきです。

エコジョーズのメリット

エコジョーズの利点は何といっても「小回りが利く」事です。

お湯を使うときに都度沸かすだけですので、特に気にすることはありません。

都市ガス地域で家族が3人以下で、お風呂にお湯を張るよりもシャワーが多く、

お風呂タイムも朝だったり夜だったり、入らなかったりする家庭だと、

エコジョーズが最適です。

エコジョーズの年間光熱費は大体6万円~10万円です。

他の機器との組み合わせ相性については、太陽熱温水器が良いです。

太陽熱温水器で沸かしきれなかった分をエコジョーズで賄うという

イメージですね。お昼にできた、アツアツのお湯を早い時間に浴槽に

溜めておき、夜に入る。浴槽が保温タンクの代わりです。

太陽熱温水システムと組み合わせると、もはや別の商品のような

特性になりますので、それはまた個別に。

エコキュート

続きましてエコキュート

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ヒートポンプで熱を作り、その熱でお湯を作ってタンクに溜めておきます。

よく勘違いされますが、背の高い部分は只のタンクで、熱を作るのは

エアコンの室外機みたいなやつです。

熱のつくり方はエアコンや冷蔵庫や自動販売機にも使われている

ヒートポンプという機械です。

エコキュートのデメリット

電子レンジや電気ケトルなどは電力を100W投入すると、100Wの熱を

作ります。電気をそのまま熱に変える訳ですね。

ところが、このヒートポンプというやつは、100Wの電力を入れると、

その100Wを熱を作る事に使わず、熱を盗んでくることに使います。

盗む先は大気です。大気の持っている熱を盗んでお湯に入れます。

なので、大気がお金持ち(熱量が多い)の時期(夏)には、同じ元手でも

沢山盗むことができますが、大気が貧乏な時期(冬)はあまり上手に

盗めず、効率が下がります。

お湯の保温に16000円

また、電気はガスの様に瞬間的に高火力を出す事は苦手です。

例えるならガスは短距離選手、ヒートポンプは長距離選手です。

なので、お湯を大量に使う夕方に備えて、あらかじめお湯を作って

タンクに溜めておきます。お湯の出来上がる時間がお風呂の直前なら

タンクのお湯は殆ど冷める事はありませんが、エコキュートは

電気代の安い深夜電力を使ってお湯を作ります。

という事は、お風呂に入る時間が20時だとして、お湯を作るのは

0時から4時くらい。つまり、16時間程の保温タイムがあるわけです。

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保温時には平均で100Wくらいの電力を使いますので、毎日1.6kWhの

エネルギーが保温のために使われます。365日で584kWh。

お金に換算すると年間16000円くらいは保温の為に電気を使っています。

もし、「今日はお風呂に入らなかった」という日があると、保温時間は

24時間になりますので、更に保温のための電気代がかさみます。

エコキュートの年間光熱費はだいたい4万円~8万円ですので、

3割~4割が保温のためのエネルギーです。

保温時間を如何に短くするか、捨て湯を作らないかがエコキュートの

肝になります。

なので、夜に大量にお湯を使う生活よりも

朝風呂生活の方がエコキュートにとっては有利になります。

また、毎日規則正しく同じだけのお湯を使う習慣を付けると

捨て湯が少なくなりますのでより省エネです。

それでも毎日のお湯の使用量が変わる事はあると思いますが、

その時は、その都度、「今日は多めで」とか「今日はもういい」

とか、エコキュートに教えてあげると良いです。

そういう設定がエコキュートにはありますので。

旅行に行く時などは、「この先5日間は沸かさないでね」

とお願いすることもできます。

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エコキュートと太陽光発電の連携は必須

エコキュートで鍵になるのが太陽光発電です。

表でも相性◎になってましたよね。

今までは売れ売れどんどんで、自家消費は眼中になかったですが、

売電価格が買電価格を下回ると、自家消費時代になります。

太陽光発電で作った電気を使ってお湯を作る事で、非常に

省エネなお湯になると共に、今まで16時間程保温していたのが、

お昼の3時くらいにお湯が沸きあがるとして、5時間程の保温で

済むようになります。すると、保温に掛かるお金は16000円から

5000円程まで軽減されます。

エコキュートを選ぶのであれば、将来的な太陽光発電との

連携は必須になってくると思います。

エワコン

続きましてエコワン

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エコキュートと同じような感じに見えますが、こちらは

エコキュートとエコジョーズのハイブリッド構造になっています。

エコキュートのタンク部分がぐっと小さくなり、そこにエコジョーズが

組み込まれています。

中身を解説するとこんな感じです。

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基本的にはヒートポンプでお湯を沸かして溜めておきます。

使用湯量の少ない時間帯は、それだけで運転を行います。

そして湯量の多くなるバスタイムなどではエコジョーズも運転して

お湯を作ります。

エコキュートで弱点になりやすかった給湯タンクの残り湯問題も

極力回避できる仕組みになっております。

深夜電力割引が使えなくなるデメリットはありますが、

そのぶん、いつでもヒートポンプでお湯を作る事ができ、

お湯が冷める時間を減らす事も可能です。

エコキュートの良いところとエコジョーズの良いところを

混ぜ合わせたような商品です。

面白いのが、エコキュートからエコワンに変えるだけで

年間エネルギー消費(APF)が250%→360%と、1.4倍になる事。

※メーカーカタログの数値

ヒートポンプの効率は変わりませんのでこの効率アップ分は、

まるまる、タンクの無駄な保温と捨て湯がなくなった分です。

この先、太陽光発電の自家消費と組み合わせると、更に

電気代は安くなりますし、今は出来なさそうですが

太陽熱温水器と組み合わせることで、更にガス消費量が

減らせる可能性も秘めた商品です。

ただ、二つの商品を組み合わせているだけあって、

その制御システムや機器のバランス、将来的な

他の設備との連動等、もっと良くなるための改善点も沢山です。

今現在エコジョーズを使っておられて、屋根に太陽光が

載っているよという方は、次回の交換時には是非候補に

入れていただきたいのがエコワンですね。

エコキュートからエコワンに変更する時の注意点

北陸や東北、北海道などの寒冷地ではタンクを

屋内に置く家庭も多いと思います。

エコワンの場合はタンク部分にエコジョーズが組み込まれていますので

屋内にエコワンのタンクを設置しようと思うと、

エコワンで燃焼する空気の給排気は外部から持ってこなくてはなりません。

その分少し工事費が増えていきますのでご注意ください。

エネファーム

最後にエネファームです。

2018現在、ずいぶん下火になってきたような気もしますが

条件がハマれば、圧倒的な省エネ効果を発揮してくれる設備です。

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電気とお湯の両方を作り出す設備です。

電気のつくり方が面白く、よくある発電機の様にガスでエンジンを回すのではなく

ガスから水素を抜き出し、空気中の酸素と結合させて電気を作り出します。

中学校の時に、水に電気を流すと、酸素と水素に別れる実験をしました。

その逆をやるんですね。

で、その時に副産物として沢山の熱が出ます。その熱を水に与えて

お湯を作っているわけです。

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シンプルに理解するならこんな感じです。

もうちょっと詳しく理解するなら↓ですね。

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エネファームを取り入れる場合の注意点

エネファームを取り入れる場合の注意点としては

電気がメインで、お湯はついでに出来るという点です。

朝起きてから夜までの間に、殆ど電気を使わない家庭ですと、

お湯は全く作られません。

で、いざお湯を使うときにはバックアップ用として設置された

エコジョーズがお湯を一所懸命に作っているという状態。

つまり、高価な燃料電池が全く生かされずに終わる可能性もあります。

エネファームを取り入れた方が良い家庭とは、昼間の電気使用量が多く

なんならお湯の使用量もそれなりに多いという家庭です。

ガスを普通より多く使う様になる半面、電気を使う量がぐっと減ります。

そして、エネファームが将来的に有利になる可能性があるのが、

そのエネルギー使用効率です。

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化石エネルギーを電気に変える時に、その利用効率は大体4割弱です。

発電する時に出る熱エネルギーは無駄に捨てられているのが現状です。

エネファームはその熱を家庭で発生させるために、利用することが可能です。

その為、ガスのエネルギーを今までよりもはるかに効率よく使う事が出来ます。

今はまだ実施されておりませんが、二酸化炭素排出税というものが出来た際、

化石エネルギー使用量が減るというのは有利に働きます。

税金額が倍違うという事ですね。その税率如何によっては、

エネファームがとても得をする事もあります。

また、太陽光とのダブル発電という言葉もありますが、

太陽光の売電価格が下がって、自家消費したほうが良い時代が来ますと

太陽光のエネルギーを売っても二束三文、

自家消費するとエネファームが動かず、普通のエコジョーズだけ動く。

という状態になってしまいます。

初期投資が高額なだけに、本当に自分たちの家族にとって、エネファームが

適しているのかどうかは、よく検討する必要があります。

太陽熱温水システム

最後は太陽熱温水システムについてです。

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こちらも貯湯タンクと、バックアップ熱源機にエコジョーズを持っている点では

エコワンやエネファームと同じですね。

お湯の沸かし方が、太陽の熱をそのまま使う事になっただけです。

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太陽から集めた熱が足りていればそのまま使い、足りなくなったら

エコジョーズで適温まで沸かして給湯を行います。

上手く使えば省エネ具合はナンバーワンです。

太陽の熱を使うのにお金は要りませんので。

お湯ができるのは太陽次第

ただし、こちらは自然が相手の事ですので、他の設備と考え方が

根本的に違います。他の設備は、今現在の暮らしに合わせて

設備が融通してお湯を作ってくれます。人間本位です。

対してこちらは、太陽が出ている時間にお湯を作ります。自然本位です。

太陽なんか関係ない、俺は俺の使いたい時にお湯を作ってほしいんだ。

という考え方の生活と、こちらのシステムはあまり合いません。

太陽の出ている時間に合わせてなるべくお湯を使うという生活をすると良いです。

日が沈む前くらいが一番お湯の温度が高いですので、

その時間に浴槽にちょっと熱めのお湯を張っておくなどの生活が合います。

個人的な感想ですが、私が選ぶなら、この、太陽熱温水システムです。

自然に近い暮らしがしたいなぁと常々思っております。

太陽の恵みと適度な不便さを感じながら生活が出来ます(笑)

今日はお湯があんまりできてないからお風呂はシャワーだけにしよっか。

みたいな、エネルギーを意識する暮らしがしたいです。

超長々と、給湯器について書いてきましたが、

実際どの給湯器が良いのかどうかは、その家族によってバラバラです。

是非、エネルギーや設備の分野に強い、建築会社さんに相談してください。

勿論弊社でも大丈夫です。

 

さて、今回は給湯のお話しでしたが、

家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

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  • この記事を書いた人
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森 亨介(こうすけ)

国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。 生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。 凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表理事 一般社団法人パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー

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