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2017.06.20ブログ

家余りの時代に  その2

前回のブログの続きになります。

日本の空き家は約700万戸もあり、家が余りまくっている。そんな時代に新築を建てる意義はあるのかというお話でした。

私は2つの意味があると考えています。一つは経済対策。もう一つは国民の生活の質向上。

しかし、経済対策については、地域にお金が落ちない家を建てても意味がないというお話でした。

 

今日は生活の質を向上させることについて書いていきたいと思います。

 

何度か書いておりますが、日本の家は先進国の中では非常にレベルが低く、その中で暮らす生活の質はあまり良いとは言えないものです。

今までは粗製乱造で家の量を増やしてきましたが、十分に行きわたったのであれば、これからはより質の高いものを目指すのは自然な流れだと思います。

私はカメラが好きですが、ある程度どの焦点距離でも撮れるレンズが揃ってきましたら、今度はより明るいもの、よりきれいな物と、質の向上に目が行きます。

仕事の道具でも、まずは揃える事、次に質の高い物をとなりますよね?

 

では、質を上げていくとはどういう事か、耐震性、耐久性、健康性、省エネ性ではないかと思います。ご存知のように、阪神大震災以来、日本は大きな地震が来るたびに、古い家がバタバタと倒れていきます。

そもそもの耐震性が低い事に加え、耐久性が低いため、構造躯体がどんどんと弱っていってしまう事が原因です。

そもそもの耐震性については構造強度上げていく事が大切で、現在の法律で言うと、耐震等級1,2,3とあり、なるべく高い耐震等級を取る事が解決策になります。

残りの耐久性、健康性、省エネ性については、実は全部一緒に上げていく事が出来ます。本来、木材の耐久性は1000年程です。伐採から200年程かけて固くなり、その後800年程かけて伐採時の強度に戻ります。

木材の耐久性が落ちる原因は、紫外線と水分です。ウッドデッキが5年程で傷んでしまうのは、紫外線も水分も、これでもかと浴び続けるからですね。では、壁の中にある木材については、紫外線は大丈夫です。残りは水分。壁の中の木材に水分が付着する原因は雨漏りと結露です。雨漏りは当初の施工に加え外部の適切なメンテナンスが大切です。結露については、温度と湿度をちゃんと計算して壁体構造や屋根構造を作る事が大切です。いくらカラカラに見える砂漠の真ん中でもキンキンに冷えたビール瓶は結露を起こしますし、むわっとする浴室の中でも、淹れたての熱いお茶が入った湯飲みは結露しません。結露が起きるメカニズムを正しく理解し、建てた当初は勿論、半永久的に結露を防ぐ壁体構造、屋根構造を作る事で木材に水分が付着することを防げるのですね。

一つ忘れておりました。結露を防ぐ方法はもう一つあります。温度差を作らない事です。明治以前の暮らしの様に、局所採暖で寒さをしのぎ、温度差を作らない生活を送れば、結露とは無縁の生活をすることができます。私自身、横浜で5年程暮らしましたが、借りていたアパートにカビはおろか、結露一つ出すことなく生活し、退去時に大家さんからは「どうやったらこんなにきれいに生活できるんですか?」と聞かれたほどです。が、実際の生活は温度差の無い、とても暑く、とても寒く、そして24時間家中の換気扇をつけっ放しにするというものでした。

健康性については、上記と真逆で、とにかく家の中の温度を下げない事です。家の中というよりは、身体の体温を下げないことが目的です。人の免疫力は基準より体温が1℃上がると5倍に上昇し、1℃下がると30%低下します。手足の指先の温度は33℃を保つのが理想です。しかし、室温が低いととてもそこまでは上がらず、体調を崩しやすくなります。なので、まず暖房器具を使わずとも真冬の自然室温が13℃くらいまで上がり、少ないエネルギーで容易に20℃くらいまで室温を上げられる性能設計が必要になってきます。暖房をすると空気が乾燥する為、加湿をします。その加湿した水分が壁を通して屋外に逃げて行ってしまっては意味がありませんし、屋外に逃げていく過程で木材に水分が付着して木材を痛めますので、完璧な防湿計画も一緒に行わねばなりません。

少ないエネルギーで暖房を行えるという事は、それがそのまま省エネ性につながります。

という事で、耐久性、健康性、省エネ性についての基本的な対策は、断熱と防湿になるわけですね。最近は断熱に一生懸命取り組む方が増えてきましたが、防湿については何も考えていない人も多く、そういった人が腐る家を建ててしまい、「高断熱住宅はダメだ」という烙印を自分で押してしまいます。

生活の質を上げる家にするためには、構造強度と断熱性能をできるだけ高め、防湿は完璧に行う事が求められます。そういう家を建ててくれるのであれば、助成金を出しますよというのが、今の行政のスタンスです。

 

家余りの時代にあえて家を建てるのであれば、地元にお金の残る(自分たちの子供に回ってくる)性能の良い家を建てる。

今からもう一巡、安かろう悪かろう、30年しか持たない家を建て続けたら、日本は本当に立ちいかなくなってしまいます。

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