岐阜の木造注文住宅を「完全自社施工」する岐阜県岐阜市の凰(おおとり)建設のスタッフブログ

凰スタッフブログ

森 亨介

18.06.16

自立循環型住宅ガイドライン 改修版

日本には6000万戸の住宅ストックがあります。

それに対して、世帯数は5200万世帯。空き家率は13%になります。

そして毎年80万戸くらいずつの住宅が新しく作られ続けており、毎年10万戸くらいずつ壊されていってます。

ただでさえ余っているのに、更に年間70万個ずつふえていくという、完全に供給過剰状態です。

しかし、日本の建物は物理的にもイメージ的にも寿命が短く、壊されずに残っているけど「これ、住めないよね」という「家の形をした箱」がどんどん増えて行っております。

今すぐ新築することを禁止しても日本の社会は殆ど困る事が無い中で、今後は今のストックを大切にリフォームしながら使っていきましょうという世の中の流れが出来ることは想像に難い事はありません。

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当然国も色々と考えておりまして、国が公式に勧める省エネルギーリフォームの技術資料が今年の春、発刊されました。全国各地で講習を受けた人がテキストを貰えるという仕組みで、名古屋は6/15に開催でしたのでそちらに参加して、テキストを貰ってきました。

ガイドラインを手に入れた事と、もう一つ自分にとって嬉しかったのが、建築研究所の三浦さんに初めて直接お会いできたことです。美濃市にある森林文化アカデミー辻先生のお話しなどでお名前を聞く機会がとても多い方でしたし、エアコンの実測COP論文や数号前の日経ホームビルダーなどでもお名前を拝見しておりました。日本の住宅省エネ計算のレールを敷いていかれる方だと思っておりますが、TwitterやFacebookの文章から伝わってくる物は非常に自分に近いと勝手に共感しておりました。
研究者の皆様は各種計算に便利な係数や近似値をいっぱい作ってねとFBでお願いしたところ、そういう考え方は良くないですと怒られたこともあり、色々感慨深いものがありました。

 

さて、内容の肝は新しい断熱指標である区画熱損失係数Q*(きゅーすたー)の認知と普及でした。

住宅を部分的に改修工事を行う際の温熱や経済性の評価を行うための数字です。暖房している部屋から暖房していない部屋への熱の逃げ方などを考慮して数字を出します。
Q*の考え方が出る前から、ほぼ同じ計算をしながら断熱改修に取り組んでおりましたので、考え方に異論は全くありませんでした。

 

ここからはちょっと専門的なぼやきですが、、、

 

単位はやっぱり(W/㎡K)でないとダメなのでしょうか。冷暖房温度差1℃当たりに逃げる熱量の数字をあえて最後に床面積で割ってW/K→W/㎡Kにしているわけですが、実務でさっと必要な数値を算出するのはW/Kの方が楽なんですよね。
これは昔のQ値でもUa値でも言えるのですが、㎡数は設計が終わった後は固定値です。しかし、温度差Kは住まい手が自分で決められる数値でもあります。300W/Kみたいな数字の改修で冬の平均気温が5℃の地域があったとすると18度まで暖房したいんだったら4kWのエアコン、23度まで暖房したいんだったら5.6kWのエアコン。みたいに暗算でも出来るようになるんだけど、、やっぱりダメでしょうかね。
 

そんな話を三浦さんにしてみたかったのですが、緊張して話せず終わってしまいました(笑)

 

ともあれ、ようやく国が公式に、こうやって設計してくださいねと発表をしたわけですので、存分に活用させていただきたいと思います。

森 亨介

18.06.11

梅雨時の除湿のお話し

岐阜もいよいよ梅雨入りをしました。今日も空はどんよりしており、すっきりしない天気ですね。

 

さて、梅雨時に悩むのが除湿をどのようにするのかという問題です。

よく、エアコンをつけたらものすごく温度が下がって寒い割にあまり湿度が下がらないという相談を受けます。

 

冷暖房や除加湿の話は、単純な物理のお話しです。決して魔法で決まるわけではありませんので、正しい知識と設備の選択さえ行えれば、快適に過ごしていただくことができます。

ただ、これからお話しするのは、凰建設で建てた家に限ると思ってください。建物の防湿計画ができておらず、除湿するそばからジャンジャン湿気が流入する建物ではその分も含めて除湿計画をしなくてはなりません。そして、そういう建物では、快適な環境にするためのコストがかかりすぎる為、結局計画が絵に描いた餅で終わる事が殆どです。

6月後半、梅雨真っただ中の岐阜の平均気温は23.8℃、平均湿度は76%、絶対湿度で言うと14.2g/kgDAです。ジメジメしてますね。これを温度を変えずに湿度だけ下げたいと思います。24℃50%まで除湿をすると、絶対湿度は9.4g/kgDAです。およそ5g/kgDAの除湿です。換気量が150㎥/時だったとしますと、一時間に850mlの湿気を室内空気から取り除いてあげなくてはなりません。24時間で20ℓ程度の除湿量が必要です。エネルギーに直すと除湿をするために必要なエネルギーは480Wくらいです。定格除湿能力が10ℓ/日くらいの除湿器を1階に1台、2階に1台置いておくと、ちょうど良い感じになるかと思います。ちなみに除湿に掛かる電気エネルギーは2台で500Wくらいです。

これをエアコンで除湿しようと思うと、ちょっと厄介です。再熱除湿機能の付いていない機種の場合、その冷却エネルギーの7割が温度を下げる事に使われ、残りの3割くらいが湿度を下げる事に使われます。例えば2.2kWの定格能力のエアコンですと、1540wが冷房に、660Wが除湿にという具合です。除湿に480Wのエネルギーが使われるという事は、1120Wが冷房に使われるという事です。温度を下げたくないのに、1120W分の温度が下がってしまうのですね。例えばQ値2.0W/㎡kで100㎡の家だった場合、下がってほしくないのに5.6℃室温が下がってしまいます。23.8℃から5.6℃下がると約18℃です。しかも、18℃で9.4g/kgDAの湿度量の空気は相対湿度に直すと73%です。これが、エアコンが効きすぎるのに湿度が下がらない現象の正体です。

では、再熱除湿機能付きのエアコンの場合、どうかと言うと、1120W分、冷やした空気を元の温度に戻すため、1120W分の加熱をします。1120W+1120W+480W=2720W、最近の機種は排熱を上手く再利用して効率を上げているためエアコンのCOPが4.0くらいになると仮定すると、およそ680Wの電気エネルギーを使っている事になります。加熱の部分が電熱ヒーターだと、更に電気を使う事になります。

ただ、再熱除湿機能付きのエアコンは、除湿器と違い、水を捨てる手間がかかりません。どちらを取るかは、皆様次第という事ですね。

温度が下がりすぎてしまったり、思ったよりもさらっとしなかったり、何とかしたいなという相談はいつでも受け付けております。除湿器の機種選定やエアコンの買い替え時にはきちんと建物の性能と設備の性能がバランスするものを選んでいただきたいと思います。

 

森 亨介

18.06.06

本当に悪い断熱材はあるのか

省エネで健康的な住宅をと考えていると、全ての住まい手とほとんどの作り手がぶち当たるのが「断熱材を何にしようか」というテーマです。色んなサイトを見てもグラスウールはこれがダメ、ウレタンはこれがダメ、セルロースはこれがダメと、そんな情報ばかりで、じゃあ結局何が一番いい断熱材なの?と悩んでしまうお客様も少なくありません。

あまり意味のない比較ではありますが、「(代表的な断熱材) 欠陥」とgoogle先生に聞いてみた結果を貼り付けてみます。

まずはグラスウール、次にウレタンネオマフォームポリスチレンフォームセルロースファイバー

件数だけ見ればウレタンが多いですが、ウレタンは断熱材だけではなく、世の中の様々な製品に使われておりますので、その検索結果も出てくるわけですね。

 

それで、本題ですが、本当に悪い断熱材というものはあるのでしょうか。

結論から言いますと、断熱材に良いも悪いもありません。よく、料理に例えるのですが家で使う断熱材は数ある食材のうちの一つです。例えば芋だと思って貰っても構いません。もし、住む人がカレーライスみたいな家に住みたいと考えるのであれば、使うべき芋はジャガイモだと思います。シチューみたいな家ならサツマイモも有りかなと思います。煮物の家ならばサトイモ、山かけごはんの家ならナガイモやヤマトイモを使います。断熱材も、作りたい家、理想の暮らしに合わせて使うというのが本当の使い方になります。

断熱材を比べる際に、色々な物性データを比べますが、なぜか断熱材の話なのに透湿性能を一番に比べる人がいます。家の外皮を設計するのに、トータルの透湿性能を計算することは大切な事です。それをしっかり行わなければ家の内部で結露を起こし、家の耐久性と健康性を大きく損ないます。しかし、湿気を通したり防いだりすることは必ずしも断熱材の役目ではありません。芋の醍醐味は食感とボリューム感であり、サツマイモだとそれに甘みもついでに加わりますが、肉じゃが等で、甘さが欲しければ、砂糖を入れれば済みます。むしろ砂糖を使った方がより甘くできます。

ウレタンやポリスチレンフォームの一部商品は透湿抵抗が高く、湿気の移動を止める力もありますが、やはり、断熱材の本来の役目は熱の移動を止める事です。まずはそちらの性能をきっちりと押さえる事が大切です。では、その次に透湿性能、、とはならず、実はその次に来るのは「熱容量」になります。あまり聞かない言葉かもしれませんが、断熱材がどのくらいの熱エネルギーを蓄えられるかという指標です。断熱性能を表す熱伝導率は0.02~0.05と、一番悪いものと一番良いものを比べても2.5倍くらいの差にしかなりませんが、例えばグラスウール16kgの熱容量は20kJ/㎥Kなのに対し、ロックウール50kgの熱容量は1,000kJ/㎥Kと、約50倍の差が開きます。断熱材の厚みが十分あれば、断熱性能はグラスウールの方が高いのに、住んでみるとロックウールの方が温度変化が少なく快適という事が起こるわけです。

じゃあ、ロックウールの方が良いのかというと、それも時と場合によります。熱容量を活かすためには、それなりのまとまった体積が必要な為、薄い断熱厚ですと、その蓄熱量を生かすことなく終わってしまいます。どのくらいの厚みから蓄熱量を期待できるようになるかを調べるためには、非定常計算が必要です。非定常計算とは、単純な温度差による比較ではなく、外気温や日射量が刻々と変わる中で、中に伝わるエネルギーがどのくらいになるのかという、時間の概念も入れた性能計算の事です。フリーの素材を改造した自作の非定常計算シートですが、こんな感じのグラフをつくったりして検討します。

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もし、断熱材を論じるのであれば、こういう事まで計算してみて、あなたの計画であればこの断熱材とこの断熱材を組み合わせるのが良い、と結論づけるくらいでないと、本来ではないと思います。

「ウチはサツマイモだけしか扱わない!カレーでも肉じゃがでも、なんでもサツマイモを使って料理するんだ!サツマイモさえ使っていれば甘みも出るし、最高だ!」という料理店があったら違和感があると思いますが、断熱材も同じことです。

 

企画住宅で、同じものしか作らない会社であれば断熱材は一種類でもいいかもしれません。

しかし、注文住宅を建てたいのであれば、自分に合った断熱材を選んでいただきたいと思います。

それをきちんと計算して提案してくれる会社でないと、住んだ後に思ったよりも暑い、思ったよりも寒い、思ったよりも光熱費が掛かるという事になってしまいます。

その結果、今度はあなたが「○○の断熱材を使ったけど全然ダメ」みたいなことを書き込む側になってしまいます。

 

そういえば、途中で置き去りにしてきた透湿性能の話ですが、そちらも外皮の湿気移動の計算を行い、断熱材の性能だけで不足する様であれば、防湿フィルムを外皮構造の中に入れてしっかりと施工し、断熱材の性能だけで足りるようであれば、防湿フィルムは施工しないという事になります。

ここで気を付けないといけないのがセルロースファイバーです。この断熱材だけは意図的に防湿層を抜く施工をする人が後を絶ちませんが、意図的に防湿層を抜く人で、ほんとうに非定常計算をして、大丈夫だと確信を持っている人は極々僅かです。

フリースのジャケットも雨に濡れると途端に冷たくなるように、そもそも断熱材は吸湿させると断熱性能が落ちるものです。そこをあえて吸湿させようとする事にどんな意義があるのでしょう。吸放湿性能が欲しければ、もっともっと即効性もあり、お手軽な素材が沢山あります。セルロースファイバーの良さを活かすのであれば、もっと別の設計と施工があります。とても良い断熱材だけに、この誤用は残念です。

森 亨介

18.05.28

一年目点検

本日、一年前にお引き渡しをさせていただいたお客様の建物点検にお伺いしてきました。

少し特殊な事情もあり、他の建築会社さんではなかなか対応が難しいであろうお客様でした。

 

凰建設に決められるまでに予算の事や、家庭の事情の事で、大変に悩んでおられましたが、

間取りの打ち合わせや家の工事が始まってからは、お引き渡しまで終始笑顔で家づくりができた事を懐かしく思い出しました。

 

お引き渡しの直後、お手紙をいただき、家づくりの感想を教えていただきました。

それも懐かしい思い出です。

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さて、今日の一年点検で、色々なお話を伺いましたが、特徴的なエピソードをいくつか披露致します。

 

奥様:「そういえばこの冬、毛布出してない!」

今までのアパートでは敷布団も掛布団も2枚ずつで、しっかり保温していたそうですが、今年は毛布を出さなくても十分暖かかったそうです。

 

ご主人:「エアコンだけで暖房できたのは感動的でした」

どちらかというとご主人さまの方が寒がりで、毛布は出した方が良かったみたいですが、以前のアパートではエアコンに加えて灯油ストーブも欠かせなかったとか。

 

ご主人:「最初は気密性の高さに慣れませんでした。今は大丈夫です」

気密の高い住宅は外よりも僅かに気圧の低い状態である事が多いのですが(10~30paくらい)、その違いが分かる人は、今までの家と比べると何かが違うという事を感じ取る事もあります。最初は夜、寝苦しかったみたいですが、今は全く気にならないそうです。

 

奥様:「お風呂の窓、一度も開けていないかも」

ほぼすべての人がお風呂に開く窓を選択し、殆どの人が開けずに終わります。窓を開けないとお風呂が乾かないという常識が全く逆になり、お風呂の窓を開けた方が家にとって悪い結果になり易いです。お風呂はFIX窓、もしくは窓が無くても全く困らない事に、住んだ後から皆さんが気づかれます。掃除の手間も随分変わります。

 

ご主人:「遅くに帰って来てもお風呂が暖かいのがびっくりです」

家族で一番最後に入る事が多いのはどの家庭でもご主人です。最初に貼ったお湯がいつまでも暖かく残っていてくれると嬉しいですね。

 

最初に思い描いていた通りの暖かさで住んで頂けているというのが何よりです。プランを書く前に、お客様の要望を性能数値に落とし込むからこそ、こういう感想が聞けるんですよね。

これからもずっとずっと快適に過ごしていただきたいと思います。

 

森 亨介

18.05.14

最適な家の大きさ

「何坪くらいの家が欲しいですか」

これは本当に良く交わされる、住宅建築における会話です。

うーん、40坪くらいかな。とか、35坪くらいかな。とかいろんな答えが返ってくるのですが、その数字にきちんとした理由のあるお客様は意外と少数派です。

間取りを考えるうえで、勿論全体の大きさはイメージをする必要があるのですが、一つ、考えていただきたいのは、自分が欲しいのは「40坪の家」なのか、「自分にとって十分な大きさの家」なのかという事です。動線が悪く、廊下がひたすら長い家で、びっくりするほど収納が無く、リビングの狭い40坪の家もあれば、家族が付かず離れずの適度な距離感を保って広々と使える収納の大きな30坪の家もあります。

小さい家よりは大きな家の方が良い、天井が高い家の方が良い。一般的にはそう思っている人が多いですが、実は住宅というものは、必要な大きさが確保できたのであれば、後はどれだけコンパクトに納められるかを考えた方が、長い目で見てずっと得することが多いのです。

小さい家の方が得する事をずらっと並べてみたいと思います。

①建築コストが少なくて済む

 これはもう説明不要だと思いますが、小さく作る方が初期費用が安く済みます。

②メンテナンスコストが少なくて済む

 これも説明不要レベルですが、外壁の面積は少ないほど、屋根の面積も少ないほど、交換や塗り直しの費用も少なくて済みます。

③光熱費が少なくて済む

 「住宅を温めたり冷やしたりするエネルギー=Q値×床面積×温度差」という公式があります。床面積が大きくなればエネルギーが沢山かかります。エネルギーが自分の予測を超えていえば、温度差を少なくしてガマンします。つまり、床面積を多くするのであれば、光熱費がかさむのをガマンするか、寒い、暑いのをガマンするかという選択肢になります。もう一つ、Q値を低くして何もガマンしないという方法もありますが、Q値をどの程度低くしたら想定通りの暖かさ、光熱費で収まるのかをきちんと説明できる人は本当に少ないので注意が必要です。

 

人間の居住空間は必要な機能が満たされている事が大切です。広さは機能を構成する要素の一つではありますが、全部ではありません。床の面積が足りなくとも、空間には高さという要素もありますので、高さで広さを演出したり、収納量を増やしたりすることもできます。また逆に無駄に高い空間を作ってもあまり意味をなさない事もあります。手が届かない高さにある収納が使いにくい事は誰でも想像が付きます。広さ、高さのバランスを必要最低限ギリギリで設計できることが、設計者の腕の見せ所であったりします。同じ機能を満たすのであれば、少なく作ってあげたほうがお客様の生涯コストも少なくて済みます。

 

ドラえもんにあばら屋くんという人物が登場します。私の好きなエピソードの一つですが、狭い家も空間を生かす事で充分な広さにすることができると示唆しているようなお話でした。

こんな風に、狭くとも広く使えてみんなが楽しい家を設計したいなと、いつも思っております。

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