岐阜の木造注文住宅を「完全自社施工」する岐阜県岐阜市の凰(おおとり)建設のスタッフブログ

凰スタッフブログ

森 亨介

18.04.24

家づくりと地域活性化と囚人のジレンマ

先日、岐阜市の老舗木材屋さん、後藤木材さんの研修会で、藻谷浩介さんという方のお話しを聞いてきました。

2013年に上梓された、「里山資本主義」という著書が有名だと思います。

私自身、何度もお話を聞かせていただいており、昨年の11月には、東京にて藻谷さんの講演会を主宰させていただいた事もあったりと、大変お世話になっている方です。

 

お話しの骨子は、地域を活性化させるために、地元産の素材を使おうというものです。

よく聞く話ですし、別段目新しいものではないように思われる方も多いと思います。

 

しかし、聞いたことがある事と、知識として知っている事、そして実践できている事はずいぶんと違います。

 

恐らくこの文章を読んでいる方も少なからず、地元の物を選んだ方が良いのは分かっているけど、少し安い中国産の野菜を買う事などはあると思います。

洋服を日本産の物にしようと絶えず意識して選んでいる人も少ないと思います。

 

自分の払ったお金が、どこへ行って、どのように社会に影響を与えるのか、まず普段の生活の1%で良いから考えていきませんかという提案をされました。

 

全体の為にはこちらを選んだ方が良い事は分かるのだけれども、ついつい自分の利益を優先させてしまう心の動きの事を囚人のジレンマと呼んだりします。

 

特に家を建てるとなると、金額が大きい分、少しでも得な物をと考えがちです。

 

しかし、あるハウスメーカーは、その資材の殆どを海外で生産し、日本に逆輸入させていたりします。

今は家を建てる際には沢山の補助金助成金がありますが、なぜ住宅を建てる時にそんなに優遇があるのかというと、

それだけ地域の経済に大きな影響を与えるからです。

補助金まで貰って建てる家が2件あり、片やその数千万円のお金が、東京の本社や海外の工場に流れて行ってしまう。

片や、地域の資材業者や地域の山林を潤し、お金が地域に循環してまた自分のところに戻ってくる。

 

実は、多くの場合、東京の本社や海外の工場にお金を払うモデルの方が、若干安かったりします。

そこで、金額だけを考えて、自分がせっかく溜めたお金を地域の外に放流してしまう選択肢をすべての人が続けて行ったらどうなるか。

地域のお金はどんどん流出を続け、地域の経済が立ち行かなくなります。結果、次の世代の人たちは地域で生計を立てていく事が更に厳しくなり、

地域を捨ててしまわざるを得なくなります。

 

200万人の岐阜県民の年間消費額が10万円だったとして、そこには2000億円のお金が動きます。

その1%でも、地域の物を使う事に目を向けることができたなら、20億円の市場を作る事と同じ価値G2グレードです。

 

きづいたひとか

森 亨介

18.04.05

大工さんは誰が育てるのか

凰建設では家を建てる途中に何回かの検査工程があります。

一般的には殆どの会社さんがやられていない検査の一つに、熱橋(ねっきょう)検査というものがあります。

断熱材がきちっと施工されているか、その性能は発揮されているか、金属部分が断熱区画を貫通して、家を夏に熱したり冬に冷やしたりする事になっていないかを確認するものです。

 

今回、伺った現場での熱橋検査で、設計監理者として不合格を出した部分があります。

天井にグラスウールが3枚(300mm)施工される部分の施工が凸凹していた為、

最初のグラスウールに戻ってやり直しをするものでした。

 

やり直し前がこちら↓

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いかがでしょう、断熱材はありますが、綺麗に敷いてあるかと言われると???ですよね。

グラスウールは規定された厚みで施工して初めて規定の能力が出ます。写真のような入れ方では材料が不均一な厚さになり、思ったような性能が出ません。

 

今回、この工事をしてくれたのは社員大工さんの中でも最も若い19歳の樹くんと20歳の誠也くんでした。

いい機会なので、一緒に小屋裏に入って、断熱材の施工講習会を行いました。

綺麗に隙間なく、同じ密度で施工するためには、やはり施工する場所の形に合わせなければいけません。

柱の部分など、一か所ずつ丁寧に断熱材を加工していきます。

 

で、出来上がったのがこちら↓

2018-04-05 15.59.41.jpg

 

上の写真と比べると、断熱材がきれいに平らになっているのが分かると思います。

実はこの見えている部分の断熱材が、3枚重ねのてっぺんですので、この下にまだ2枚の断熱材が入っております。

最初の断熱材から全部綺麗に平らになるように施工してこないと、このようには納まりません。

 

最初の施工の悪さは慣れていないという事もあり、仕方がありません。きちっと直して下の写真の様になればそれで解決です。

 

ふと思ったのが、どれほどの大工さんがこういう経験をするのだろうかという事です。

正直な所、正しい断熱施工が出来る大工さんというのは、家を建てるお施主様が考えているよりもはるかに少ないです。

凰建設は、若いうちから大工さんに正しい断熱施工、気密施工を教えていきます。どこに出しても恥ずかしくない大工さんになりますが、

今の時代、既にほとんどの建築会社は大工さんを育てる社会的役割を放棄しており、どこかで育ってきた大工さんをスカウトしてくるという、

某球団方式の運営に切り替わってしまっております。

断熱気密技術というのは、東海地方においては割と新しい技術で、熟練の大工さんだから教えられるというものではありません。

ただでさえ、職人さん不足が叫ばれているこの時代、お客様の家をこの先誰が守っていけるのかと考えると、若い大工さんの育成は必須だと思います。

 

これからも凰建設は、大工さんを育てる会社であり続けたいと思います。

森 亨介

18.03.22

家を安く建てる方法

家を建てる時に、やっぱり気になるのが「どのくらいお金が掛かるのか」という事です。ネットで検索すると500万円台から金額を打ちだしているところがあります。

ところが、国土交通省が出している、岐阜県の2018年1月の持ち家住宅の平均価格は2392万円となっております。

建築会社のウェブサイトには500万円からと打ち出す会社があるのに、実態の平均は2392万円。その差は実に1400万円近くになります。さて、その価格差はいったいどのようなところから来るのでしょうか。

 

色々な理由がありますが、その一つには、本当に500万円では家が建たないという事です。

住宅の本体価格を明示する際、厳密なルールはなく、どの項目を含めなければならないのかという決まりはありません。

 

なので、カーテン、照明、住宅設備、ライフライン(電気水道ガス)の接続をはじめ、酷いと基礎ですら本体価格に入っておりません。

500万円の段階では、家の形をした箱があるだけで、実際住める状態では無いという事ですね。

イメージするなら、立派なテントや段ボールハウスが500万円で買えるという事です。

そこから住めるようになるまでに、1000万円以上の金額がかかるわけですね。

 

別の理由が「標準化」です。住宅に限らず、世の中にある全ての製品は標準化して大量生産することでコストダウンをすることが可能です。

100円均一のお店で売っている何でもない木工クラフト製品も、同じものを木工職人さんに作ってもらおうと思うと3万円程かかります。

スーツも2着目1000円というお店がありますが、オーダーメイド専門店になりますと、何着頼んでもオーダーメイドで一品一品違うものを頼む限り1000円で作ってくれる事はありません。

作る住宅を標準化しつくしてしまえば、金額が下がるのですね。

標準化が如何に楽かという事を簡単に体験する事が出来ます。

ティッシュ(紙でもいいです)を5枚用意してください。

①10cm×10cmに切ったティッシュを5枚作る。

②10cm×10cmに切ったティッシュを1枚、12cm×13cmに切ったティッシュを1枚、15cm×11cmに切ったティッシュを1枚、9cm×14cmに切ったティッシュを1枚、8cm×8cmに切ったティッシュを1枚作る。

①と②を作る時間を比べてみてください。その時間の比が金額の比になります。②は恐らく、①に比べ5倍くらいの制作時間がかかりませんでしたでしょうか。

①は5枚重ねてまとめて切れば終わりですよね。でも②は、それぞれのティッシュを個別に作らなくてはなりません。

また、②を作るときに間違えたりはしませんでしたでしょうか。標準化していないという事はミスも多くなるという事です。

なので、500万円はとても無理だとしても、少しでも安く仕上げようと思うと、なるべく標準化して家を作っていくという事です。

柱の配置を一定間隔に保つとか、窓の高さを揃えるとか、家の中で使う素材の数を絞るとか、注文住宅においても、出来ることは沢山あります。

しかも、間隔や高さなどの数字をなるべく揃えて、家の中にある素材や色の数を絞れば絞るほど、デザイン的にも良いものになります。

デザインの教科書にも、よく「デザインは足し算ではなく引き算です」と書いてあります。

打ち出し価格の安い建物を選んだ人が良く言うのが「オプションがなんでこんなに高いのかが分からない」です。

ティッシュの例でいえば、10cm角×5枚のもので貫き通して初めて500万円なのに、1枚だけ9cm角にしてほしいと言えば、面積は少なくなっているにもかかわらず制作時間が倍になるうえに、捨てるティッシュの量が増えるので高くなるという事です。

正方形の形で初めて500万円、どこかに出っ張りがあるだけで+数十万円、壁の位置を10cm変えるだけで+数十万円、となるのはそういう理由です。

凰建設は最初から注文住宅なので、500万円で家づくりをする会社と比べれば特殊対応への金額差は少ないですが、それでも標準化する事でのコストダウンは少なからずあります。

 

是非標準化を上手く取り入れて、コストパフォーマンスの良い住宅を手に入れてくださいませ。

 

森 亨介

18.03.12

だからハウスメーカーは設備を一生懸命に売る

暖かくなってきて、暖房の出番ももう終わりかなという時期になってきました。

弊社のパッシブモデルハウスは既に薪を焚くことをやめております。日照だけで充分に暖かくなりますので。

 

さて、今日は建築業界の慣例というか、建築業界の不都合な真実をお話ししたいと思います。

 

住宅に限らず、日本人は「最新設備」という言葉が大好きです。

住宅で言えば、最新のキッチン、最新のエアコン、最新の家電、最新の太陽光、最新の床暖房、最新のウォッシュレット、最新の、、、、、

と、ざっと挙げるだけでも住宅は設備が沢山ある事が分かります。

 

家を建てようと思うと色々なキャンペーンがあったりしますが、「今ならエアコンプレゼント」「今なら床暖房半額」等、

設備をプレゼントするものばかりであることに気付いている人はいらっしゃるでしょうか。

実はハウスメーカーに限らず、住宅を売る会社は儲けようと思ったら「設備」を売るのが一番楽で割がいいのです。

なぜかというと、設備は必ず10年程で壊れてくれるからです。とりあえず設備をサービスしてでも入れておいて、その快適性なしでは

いられないという状況を作ってしまえば、設備が壊れた時には必ず交換してくれるからです。

建築業界で利益率が高いのは設備業者と電気業者であることは業界の人であれば大概知っている事実です。

 

今の商売は「損して得取れ」です。敷居を低くしておいて、後で如何にお金を取り返すかというビジネスモデルばかり社会全体で考えます。

携帯ゲームは始めるのは無料、後で課金したくなる仕組みです。携帯電話は乗り換えるのは無料、だけど2年間は解約できない。

車は月々3000円からと、非常に安いですが、3年後に残価設定をどうするか選択を迫られます。

当然住宅も、あの手この手で、後からお金が掛かる仕組みを考えます。全体から考えれば、設備を売る事だって一例にすぎません。

 

例えば、暖房便座、例えば床暖房、例えばエアコン、例えば浴室暖房、例えばこたつ、これらは全部住宅の中にある設備ですが、

共通しているのは「熱を発するものである」という事です。

寒い家を作っておいて、温めるための設備に依存させるのが住宅業界の当たり前であり、家を買う人も売る人も、そこに疑問を抱くことすらしません。

外国の方にウォッシュレットを使わせて「すごい、こんなのわが国には無い」と言わせるテレビ番組がありますが、

そもそもトイレの中が寒くない家に、暖房便座は必要ありません。夏に便座が暖かかったら気持ち悪いですよね。

つまり、家が寒い日本がガラパゴス的に発展させてきた、住宅の「ある部分」を局所的に温めるための設備がウォッシュレットであったり浴室暖房であったりするのですね。

 

ではどのようにすれば良いのでしょうか。

答えは簡単です。あとからお金が掛からないようになるものにこそ、最初に投資すべきなのです。

後でお金の掛からないもの、それは、住宅の断熱です。

日本の寒い家は600Wの電力を使って温まるのはこたつの中だけです。

それを30坪(100㎡)でQ値1.0の家に成績係数3.0のヒートポンプを通して熱を作った場合、600Wも電力があれば

外気温+18℃まで家中を温めることができます。岐阜市の1月の平均気温が3℃前後なので、平均21℃まで室内が暖まります。

同じエネルギーを使っているのに、片やこたつの中だけ暖かく、背中は何となくうすら寒い家。片や家中が暖かくなる家。

どちらに住みたいと思いますか?

温度だけではありません。Q値1.0の家は、2.2kW(6畳用)のエアコンが1台あれば家中を暖かくできます。

しかし、普通の寒い家は、あちこちにエアコンやこたつ、暖房便座、浴室暖房が必要で、それでも寒いです。

更に、それらの設備はそれぞれエネルギーを使いますので、600Wどころではない電力を使います。

更に更に、それらの設備は10年おきくらいに壊れてくれるので、定期的に交換も必要になってきます。

Q値1.0の家が3000万円だったとしますと、そのうち熱を作る設備に掛けるのに必要な金額は70万円です。

金額が掛かるのは断熱材をたくさんたくさん使って、正しく施工するからですね。

寒い家が2600万円だったとしますと、そのうち熱を作る設備に掛けるのに必要な金額は200万円です。

そして年間の光熱費が10万円違い、10年おきに130万円ずつ余分にお金が掛かります。

中学校2年生でやった、一次関数の式を思い出してください。

さて、何年目に逆転しますでしょうか。

 

賢い方ならもうお分かりだと思いますが、実は断熱にお金をかけた方が、断然得をするのですね。

じゃあ、なぜハウスメーカーは断熱はそこそこに、設備を売ろうとするのか。

答えは簡単、断熱ばかりにお金を掛けられては、後でお客さんからもらえるお金が減ってしまうからです。

だからあえて床暖房や高価な換気設備やエアコン、その他細々した設備品を売るわけですね。

 

後でハウスメーカーが儲かる事が分かっているから、床暖房プレゼント、エアコンプレゼント、というキャンペーンは頻繁にありますが、

断熱施工プレゼント!というキャンペーンは絶対にやりません。あとでハウスメーカーが儲からないから。

 

いかがでしょうか。

 

学校や講演会で建築業界の方にこの話をすると、「腑に落ちた」という事を言っていただける人もいれば、「そんなことお客さんには絶対話すな!」

という反応をされる方もいらっしゃいます。

皆さんが家を建てるのであれば、どちらの反応をする建築会社で家を建てたいでしょうか。

 

私が目指す良い家は、一生涯を通してみた時に、お客さんの出費が一番安く済む家です。

日本は家づくりにおいて個々人が異様に尊重され、全体的な最適は殆ど求められません。

その結果が、今の空き家問題、エネルギー問題、スギ花粉問題につながってきております。

家を建ててくださった人も、その周りの人も、社会全体が良くなる家づくりに切り替えていかねば、日本はすぐに立ちいかなくなってしまうと思います。

是非、先々の事まで考えた、賢い家づくりをしていただきたいと思います。

 

森 亨介

18.03.04

住宅のプロ≠設備のプロ

最近、住宅建築業者さんからの相談がまた増えてきましたが、私のところに相談に来られる建築屋さんの殆どは「どんな設備がいいのでしょうか」という内容です。

 

2016年度から国際たくみアカデミーにて、2017年度から岐阜高専で建築設備とエネルギーについて教壇に立たせていただいて以来、特に設備についての相談を受ける様になりました。

 

床暖房はー、エアコンはー、給湯器はー、換気はー、熱交換機はー、と、この2年で何度お話ししたか分かりません。

高気密高断熱住宅が、ほぼ世の中のスタンダードになってきつつありますが、断熱はやっても設備は適当という建築業者が世の中の99%を占めており、住宅の熱損失に合った冷暖房設備を入れている建物をしっかり計算して建てておられる人は全国的に見ても10人程度くらいではないかと思います。勿論岐阜地区では、私だけです。

 

Q値とかUA値とかC値とか、上っ面の性能数値だけが欲しいのであれば、そこまで気にしなくても良いのですが、本当に光熱費を削減したい、本当に省エネでエコな家が欲しいと思うのであれば、エネルギーを湯水のように垂れ流す設備選定はしてはいけません。

 

新建ハウジングという、住宅業界に従事する方の為の業界紙にて、設備について連載をさせていただいて2年が経ちますが、実務者の方にはなかなか浸透していかないなぁというのが残念な所です。

 

地球破壊爆弾.jpg

「そんな大げさな」という例ですが、ここ10年くらいで家を建てた人の殆どは、こんな感じの建物と設備バランスの家に住まわれております。

 

昔よりは確かに暖かい、交換する前の設備よりは確かに光熱費が安い、なので問題になったりすることはありませんが、同じ新築住宅の家同士を比べた時に、その違いが随分と出てしまいます。

 

設備のプロを見分ける方法はいろいろとあるかと思いますが、

kWとkWhの違いを説明できるか。P-Q線図の説明が出来るか。

ザイデルの式を説明できるか。換気風量に対して適切な配管径を導き出せるか。

そんなところが第一歩でしょうか。

言葉の意味さえ分からないという住宅の設計者さんがおられましたら、

エネルギー垂れ流しの住宅を覚悟しておいた方が良いかと思います。