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2020.02.14

パッシブ換気ってなに?デメリットや夏の配慮は?

パッシブ換気という換気の方式があります。

北海道で生まれた換気の方式なのですが、本州ではあまり聞きません。

熱交換換気などとの違いは何なのか。

北海道生まれの換気は本州でも使えるのか。

今日はそんなお話になります。

そもそもパッシブ換気って何なの?

 

パッシブ換気は日本の北海道で生まれた換気方式になります。

十分に断熱、そして暖房された家の中には、空気の温度差による圧力が生まれます。

気球が飛ぶ原理と全く同じで、暖かい空気が上から逃げていこうとする圧力になります。

気球のてっぺんに穴が空いたら、そこからとてもたくさんの量の空気が抜けていきそうなのはイメージが出来るかと思います。

それを換気として使おうというものになります。

パッシブ換気と熱交換換気の違いは?

この二つはルーツとなる思想から全く別の物になります。

熱交換換気は、換気を機械動力で動かし、逃げていく熱を少しでも回収しようとする、物理法則を支配するという考え方。とても西洋的なものになります。

パッシブ換気は、暖かい家を作った時に副次的に生まれる空気の圧力差をそのまま換気に生かそうというものになります。自然に抗うことなく共存し利用するという東洋的な考え方になります。

パッシブ換気に熱交換をする機能はついておりませんが、その分設備全体のボリュームを小さくすることが出来る為、初期投資はとても少なくできます。

パッシブ換気のデメリットは?

扱いが難しすぎて設計できる人が殆どいないというのが最大のデメリットかもしれません。

夏はパッシブ換気は動きません。

 

家の内外温度差が換気の動力源となりますので、温度差の無い、春や秋、温度差が逆になる夏にはパッシブ換気は動きません。冬の時期が長い北海道と比べて本州の地域では、パッシブ換気に頼らない季節が長くなります。

正しい内外温度差を維持するための超断熱

北海道の家では、玄関を入った瞬間から家の中がどこでも暖かいのは当たり前。家全体の温度が等しく外の気温よりも高くないと正しい圧力差は生まれません。気球も、袋の中は全部暖かくして初めて浮力になります。

同じような環境を作る為には、家をしっかり断熱して、家全体を暖めてあげる必要があります。関東より西側の地域であれば、各地域のG2グレードの断熱では足りません。最低でもG2グレードの1.5倍程度の断熱基準を目指して作らなくてはなりません。

とても難しい設計と計算

これが最も敬遠される理由かもしれませんが、換気扇の動力に頼らず、設計者の能力により、換気を行いますので、計算がとても複雑になります。

大気圧、室内外の温度差、空気の密度差、給気口と排気口の高低差、給気口と排気口のそれぞれの大きさを基に、換気量を計算していきますが、原理原則が分かっていないと、換気量不足による大事故が起きないとも言い切れません。

確認申請上の換気としては認められない

そして一番に気を付けなければならないのはこれ、建築基準法で定められている2時間に1回の規定の換気回数に、パッシブ換気による換気は含める事が出来ません。換気扇の動力を使わず自然に起きる圧力差を使いますので、換気量が一定ではなく、定量的に決まりを作るのが非常に難しい。

その為、24時間の機械換気はパッシブ換気とは別に、計画をしなくてはなりません。その意味でも設計者の手間はちょっと増えて行きます。

本州のパッシブ換気は防虫対策に注意

地面に近いところから給気をするという仕組みや、スムーズに換気を行うために給排気口周りの抵抗を少なくするために防虫網をはずしたりしがちなことなどが原因で、パッシブ換気を導入すると虫が入ってくるという事例を聞く事があります。

気にしなければそれでもよいのですが、どうしても気になる場合は給排気口の周りに簡単なフィルターを付ければ大丈夫です。

パッシブ換気の夏はどうする?

パッシブ換気が動くのは内外温度差の広がる冬だけ。

なので、夏はまた別の換気扇を動かさなくてはなりません。トイレや浴室、キッチンの換気扇を使ったり、別の24時間換気システムを併用する必要が出てきます。

パッシブ換気のメリットは?

パッシブ換気の最大のメリットはそのコストパフォーマンスにあります。

究極のローテクであり、パッシブ設計の極みとも言えるのがパッシブ換気です。

パッシブ換気は機械動力に頼らない

暖房による温度差がそのまま換気動力になりますので、冬に家の中が暖かい限りは換気が動き続けます。今まで換気の為に使っていたモーターの電力が不要になります。

パッシブ換気は物理的に壊れない

パッシブ換気は住宅の高いところと低いところに穴が開いているだけの仕組みです。モーターやプロペラなどの稼働部が無い為、基本的に壊れる部分がありません。

パッシブ換気は静か

モーターが回らないという事は、当然音も出ません。最近の換気システムと比べると、その静寂性は非常に高いものになります。

導入費用がとても安い

パッシブ換気自体に必要なのは、家の高いところと低いところに設ける穴だけです。あとは夏用の換気扇程度になりますが、パッシブ換気を導入しない普通の第三種換気との差額は抑えれば10万円もかかりません。

第一種換気+熱交換システムの十分の一位の導入費用ですね。

ランニングコストも安い

機械動力も交換部材も有りませんので、基本的にはほったらかしです。寒い時期になったら給気口と排気口を開けるだけ。もし、埃等がついていたらその時に掃除をするだけです。

デマンドコントロールも出来る

排気口や、バックアップ用の換気扇を湿度センサー付きの物にすれば、人が居る時間を中心に動いてくれるデマンドコントロール機能を付加することも可能。それを付けたとしても導入費用は+10万円もしないくらいです。

パッシブ換気の光熱費は?

 

通常、熱交換換気システムの場合は60W~150W程度の電力で換気扇が回っています。それがパッシブ換気の場合だと地域にもよりますが十分の一程度の動力で済むようになります。

換気扇動力費だけで冬期は熱交換換気と比べて1500円程安くなります。

また、パッシブ換気を上手に設計できるようになると、そこにデマンド換気の機能を組み込むことが出来るようになります。デマンド換気とは、換気が必要な時だけ換気量を増やし、後の時間は換気量を減らすという、時と場合に応じた換気量変化の仕組みを指します。

一般的に住宅の場合、最も換気が必要になるのは人が沢山いる夜間です。

昼間は換気量を絞り、夜間に適切に換気をするような仕組みを上手に設計することが出来れば、換気からの熱損失も抑える事が出来るようになります。

 

パッシブ換気が出来る工務店は?

パッシブ換気を取り扱える工務店さんは日本全国でも限られています。

しかも、その殆どが北海道で活動する会社さんになりますので、本州でパッシブ換気をやっている建築会社さんは本当に一握りです。

なぜ、導入する建築会社が少ないかというと、簡単に言えば儲からないから。

ダクト式の熱交換換気をお客様に提供すれば、その売り上げは数百万円になります。しかも、面倒な空気の計算などは換気メーカーが全部やってくれます。

しかし、パッシブ換気はものすごく大変な計算を自分でするにも関わらず、必要な部材費は20万円程度で収まってしまう為、労力の割には会社の売り上げが立たないんですね。

そもそも、その大変な計算を覚えるためには、大変な勉強をしなくてはなりません。

大変な勉強をしたうえで、わざわざ自社の売り上げが減るような商品を売りたい人は少ないという事ですね。

 

パッシブ換気の研究会は二つ

パッシブ換気を真面目に勉強しようとする研究会がいくつかあります。

まずは北海道の研究会がこちら

NPO法人パッシブシステム研究会

メンバーはほぼ全員北海道の方になります。北海道でパッシブ換気をやりたいのであれば、こちらに所属する会社さんに頼むのが良いかと思います。

続いて本州の研究会がこちら

パッシブ技術研究会

北海道まで勉強に行くのは大変だよねという事で、本州の方が集まって作った研究会になります。本州でパッシブ換気をやりたいのであれば、こちらの会員さんを訪ねるのが良いかと思います。

本州ではまだまだ超マイナーなパッシブ換気。

色々な制約もありますが、その費用対効果において右に出る換気システムは有りません。

もし、自分にパッシブ換気の考え方が合っていると思ったら、是非取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

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