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2017.06.02ブログ

家を買って老後破綻を防ぐ

前回の続きになります。

老後破綻が取り沙汰されるようになりました。人生の計画において、老後破綻を防ぐためにはお金に対するリテラシーが必要ですよねというお話をさせていただきました。

 

注意すべきは短期的に大きな支出よりも、長期的にかかる小さな支出ですという話をしました。

下の図は日本人の一生で使われるお金の動きを描いたグラフです。(ソニー生命より拝借)青色が家を買うお金。オレンジ色が生活の為に使うお金です。(水道光熱費含む)

ライフプラン.jpg

 

毎月の手取り収入において、3割くらいが住宅ローン、3割くらいが生活費、残りが教育費というようなイメージですが、住宅ローンは長くても35年で終わるのに対し、生活費は死ぬまで続きます。

住宅は単体で見ると一生のうちで一番高い買い物になりますが、一生で使うお金のうち、住宅単体に掛けるお金を比率で表すと、10%~15%程です。

生涯賃金3億円の世帯ですと、家に掛けるのは3000万円~4500万円という事になります。それ以外にも水道光熱費や修繕、維持管理に諸々必要になり、平均で1世帯当たり8000万円の生涯費用が掛かるのです。

 

生涯に使うお金3億円、そのうち「住む」という事に掛けるお金は8000万円。そして住宅単体に掛けるお金は3000万円という事になるわけですね。

スクリーンショット 2017-06-02 16.11.54.jpg

 

ここからがブログの本題になっていきます。

実は、住宅の良し悪しは、家を建てた後、買った後に掛かってくる生涯コストに大きく影響します。防水性の悪い家は、早期に雨漏りを起こします。防湿設計のおかしい建物は壁体内結露が家を蝕み始めます。断熱性の弱い建物は光熱費をいくらかけても暖かくなりません。低い温度で生活をすると各種疾患に襲われ、医療費が掛かります。今後、日本人は1世帯当たり生涯コストで4000万円を裕に超える金額が掛かってきます。エネルギーコストも3000万円前後のお金が掛かります。休日に安らげないような悪い環境の家を建ててしまうと、特に用事が無くても暑いから、寒いから家にいたくない。じゃあイオンに遊びに行こうとなり、結局使わなくても良いお金を使うようになります。

最初に良い家さえ建てておけば、後々使わなくても良くなるお金は何千万円にも上ります。生涯コストで、使わなくても良いお金が1000万円できれば何ができるでしょう。

自分たち世代のみならず、自分たちの子供世代までずっと使える家を建てる事が出来たならば、住宅ローンを組まなくても良い子供たちはもっと人生を豊かに過ごすことができるのではないでしょうか。

 

元々日本人は長期的な目線に立った考え方をするのは苦手ではありませんでした。世界の中でも200年以上続く企業がこんなにも沢山あるのは日本くらいのものです。しかし、戦争が終わり、焼野原から短期間で国土全体を作り変える作業を行ううちに、スクラップ&ビルドのサイクルを早める事だけが国を豊かに出来るという考え方が一般化してしまいました。時期が来たらきちんと壊れる製品を作る。住宅においても、未だに殆どの会社がその意識から抜け出せておりません。いくら長期優良住宅とは言え、給排水管や電線など、主に住宅設備関係の部材がボトルネックとなり、いつかは新築そっくりさんみたいな大規模工事をやらざるを得なくなります。平気で断熱材の中に電線を埋めてしまう工事をする建築会社が当たり前にいます。少し電気の事を勉強したことがある人であれば、電源線の周りに分厚い保温材がある事が如何に恐ろしい事かが分かります。

これ以上日本人には住宅にお金を使ってほしくないというのが私の願いです。それよりも未来の世代に対する教育であったり、文化、教養を高める事であったり、地球環境に対する事であったりにお金を使ってほしいと思います。

老後破綻を防ぐためには、退職後、収入が途絶えて以降の支出をいかに抑えるかという事に尽きると思います。年を取って代謝量が落ちてきますと、身体が熱を作りませんので、寒いと感じます。寒いと免疫力も低下し、医療費がかさむようになります。寒くしないために、暖房をつければ暖房費がかさむようになります。暖房費が掛からず、暖かい家を建てる事は、老後の支出を抑えてくれるという事です。

もし、家を建てるのであれば、どうせ家を建てる事になるのであれば、一生涯を通して、一番家計を助けてくれる家を建てるべきです。

先日、教壇に立たせていただいております岐阜高専で中間テストがありました。建築環境工学、建築設備工学について、その学問の意義を問う記述を学生さんにしていただきましたが、今回のブログテーマにあるような、長期目線の大切さを挙げてくれる学生さんが沢山いました。卒業生はほぼほぼ巨大企業に就職することになってしまうのですが、彼らみたいな人材が住宅業界にもっと増えて行けば、きっと業界は良くなるのになぁと思わずにはいられませんでした。

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