子ども部屋はいらない?自分で考える子どもを育てる住まい方

こんにちは。凰建設代表取締役の森です。

家づくりを考えるときに、必ずといっていいほど話題に上がるのが「子ども部屋」です。

広さは?場所は?将来どう使う?…間取りを検討中の方の多くが悩まれるポイントでしょう。

実は、子ども部屋には「子どもの自立心」「家族との関わり方」「空間の教育力」という、見えないテーマが隠れています。

私は「子ども部屋=必要なもの」とは捉えていません。

むしろ、理想の子ども部屋とは「少し足りない」くらいの部屋、あるいは作らなくてもいいものだと考えています。

こちらの記事では、「本当に子どもの成長につながる子ども部屋のあり方」についてお話しします。

「理想の子ども部屋」とは何かを考える

理想は「どんな子に育ってほしいか」で決まる

「理想の子ども部屋」と聞くと、多くの方が「広い」「明るい」「静か」といった条件を思い浮かべるでしょう。

しかし、何を理想とするかは家庭によって異なります。

私はよく「理想の子ども部屋とは、理想の子ども像をどう考えるかによって決まる」とお話します。

空間のデザインよりも、その部屋でどんな人に育ってほしいのか。子ども部屋の本質は、そこにあります。

私が理想とするのは、自分で考え、行動し、新しい道を切り拓ける子どもです。

創造力を持ち、自分の頭で考えられる人間を育てたい。そのためには、親が先に環境を整えすぎるよりも「どうしたらできるか」を自分で考える経験が欠かせません。

少し足りないほうがいい理由は歴史が示唆している

「少し足りない」ほうが良い理由は、子ども観の歴史と日本の住まいの変遷を見ると腑に落ちます。

18世紀にルソーが「子どもは大人と異なる存在だ」と捉え直し、近代的な子ども観が芽生えました。

19世紀にはフレーベルが幼稚園の設立など子どもの教育環境の重要性を提唱し、その潮流は日本にも波及します。

また、ドイツのケラーマンは「子ども部屋=遊びのための小宇宙」と位置づけ、創造的な遊びや工作、芸術を育む場としての意味づけを与えました。

引用文献:インゲボルク ヴェーバー=ケラーマン(著),田尻 三千夫(翻訳) (1996).『子ども部屋』

日本でも明治〜大正期に「自宅に幼稚園並みの設備を」という理想論が語られる一方、現実には戦後の住宅普及とともに「子ども部屋=個室が善」という価値観が一気に浸透していきます。

ところが1980年代以降、その「完成された個室」は、ひきこもりやコミュニケーションの希薄化、独立後の空き部屋化といった副作用を生みやすいことが議論されてきました。

参考文献:小俣謙二(1998).大学生の自室への引きこもりに関与する住居および心理要因の検討
宿谷いづみ(1999).離家後の子供部屋利用からみたネットワーク住居の一側面

戦後の個室推奨の風潮がもたらした社会的な問題が、顕在化してきたのです。

そして、2000年代には「閉じた個室」よりも「開かれた居場所」の設計へと主流が移りつつあります。

結論として、十分すぎる個室を先に与えるのではなく、あえて小さな不便や不足を残すことが、子どもに工夫を促し、家庭内の対話を増やし、問題解決力と創造性を鍛える最良の設計になると私は考えています。

「足りない環境」が創造力を育てる

ママ

どんな子ども部屋だといいのかしら?

おっぴー

豪華にしない・広くしない・そもそも作らない選択肢も考えよう!

不足が思考を生む!必要は発明の母

人は足りないことで初めて考えます。

「必要は発明の母」という言葉の通り、不足があるとき、人は「どうすれば足りるか」を考えるようになります。

この思考の習慣が、創造力を育てる基盤になります。

理想は「ちょっと不便な子ども部屋」

私は、子ども部屋は快適である必要はないと考えています。むしろ、少し不便な方が良いと思うのです。

狭い、暗い、収納が少ない、暑い、寒い・・・これらは一見すると欠点のようですが、子どもにとっては「考えるきっかけ」になります。

どうすれば快適になるのか、どう工夫すれば使いやすくなるのか。

その試行錯誤の過程で、工夫する力と問題解決力が育ちます。

実例:我が家の「子ども部屋なし」教育

私は自宅に子ども部屋を設けませんでした。

この話をすると「かわいそう」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、それは大人に「子どもには子ども部屋を与えるべき」という「常識」があるからです。

子ども自身に「部屋があるのが普通」という概念がなければ、子どもは不満を感じません。

やがて成長し、友達の家を訪れて初めて「子ども部屋」という存在を知り「自分も欲しい」と感じます。

どうやったら自分の部屋が手に入るのか、それを考えるときが、学びのチャンスとなります。

自邸のルームツアー動画で、我が家の子どもスペースを少しご紹介しております。

「ほしい」と言われたときが親の出番になる

ママ 

うちの子、最近「自分の部屋がほしい」って言い出して・・・。

おっぴー

すぐ個室を与えるのは親の先回りだよ。まず「なぜ必要?」を一緒に探るべきだね。

欲求を満たす前に対話する

子どもが「部屋がほしい」と言ったとき、すぐに用意するのではなく「なぜ必要なのか」「どんな使い方をしたいのか」を一緒に話し合います

「個室でなければダメなの?」という問いを立てたときこそ、実は発想を広げるチャンスです。

既存の空間を工夫すれば、必ずしも個室を用意しなくても、子どもが集中できる環境はつくれます。

たとえば、こんな方法があるでしょう。

  • 家族の生活リズムに合わせて勉強する時間帯を切り替える
  • 可動式の間仕切りや書棚を使って一時的な仕切りをつくる
  • 耳栓やタスクライトなど小さな工夫で集中できる環境を整える


このように「使い方を変える」ことで、子どもは自分で考えながら環境を整える力を身につけていきます。

子どもの考えを引き出すために、以下のようなやり取りをするのもよいでしょう。

「勉強に集中したいから部屋がほしい」 
→「今はどこで勉強してるの?集中できない理由は何?」
→「リビング。弟がうるさくて集中できない」
→「じゃあ、時間をずらしてリビングを使う?それとも、ほかにどこか勉強できそうなスペースはある?」

勉強に集中できない理由が本当はどこにあるのかを、一緒に分解して考えるのです。

個室でなければできないことなのか」「今ある空間を工夫して代用できるのか」を一緒に考える時間が、実は最高の教育になります。

自分で得たものは大切にする

こうした対話を経て、最終的に「やっぱり自分の場所が必要」という結論に至ったとき、初めて空間を与えます。

あるいは、家の中の一角を「ここを使っていいよ」と許可するのです。

自分で考え、提案して得たスペースは、子どもが最も大切にします。

「この棚を使いたい」「ここに仕切りを作りたい」など、小さな交渉や工夫を通じて得た空間には愛着が生まれます。

私はこのことを「革命で勝ち取った民主主義と、与えられた民主主義の違い」に例えています。

当たり前に与えられたものよりも、自分で努力して得たものの方が、はるかに大切にされるのです。

親の役割は「考えさせること」にある

ママ 

なんだか、子どもへの接し方を考えさせられるわ。

おっぴー 

最初から「快適」を提供すると、工夫する力や考える力を鈍らせるんだよ。

「先回りの優しさ」が思考力を奪う

子どもが何かを求める前に、親がすべて与えてしまう・・・。

それは愛情のようでいて、子どもが考える機会を奪う行為でもあります。

親の役割は、困らせることではなく「考えさせること」です。

困難を避けるのではなく、どうすれば解決できるかを考える時間を与える・・・。

その経験が、子どもの思考力と応用力を養います。

時間こそ最高の教育投資になる

ここで一つ、本質的な問いを投げかけたいと思います。

子どもと一緒に考え、対話する時間を、あなたは持てていますか?

私はよく「お金は取り戻せても、時間は戻らない」とお伝えします。

実際、無理な住宅ローンを組んで働き続け、子どもとの時間を失っている方が世の中には存在します。

もし今、あなたが仕事に追われて子どもとの時間を十分に持てていないなら、ひょっとしたらあなたに必要なのは「立派な家」ではないのかもしれません。

家づくりを見送れば、お金の悩みが減り、働く時間が減り、子どもと過ごす時間が増えます。

立派な子ども部屋より、一緒に考え、笑い、話す時間の方が、子どもの人生にとってはるかに価値があります

家庭の安心感が挑戦する勇気を生む

もう一つ大切なことがあります。それは、夫婦関係です。

夫婦の関係が穏やかであれば、家庭には安心感が生まれます。

この安心感が、子どもに「外へ出て挑戦する勇気」を与えます。

どんなに立派な子ども部屋を用意しても、家庭の雰囲気が不安定では意味がありません。

家庭の雰囲気そのものが教育の一部であり、子どもが社会で自立する力の土台になります。

子どもに必要なのは、子ども部屋という空間ではなく、心地よく過ごせる居場所なのです。

家づくりは「子どもをどう育てたいか」から始まる

ここまで子ども部屋について、さまざまな視点からお話ししてきました。

ここで一度、少し上流の話をさせてください。

そもそも、家づくりを考えている方の多くは子育て世代です。

独身の頃や結婚したばかりの頃には意識しなかったとしても、子どもが生まれると、自然と未来のことを考えるようになります。

この子は、どんな大人になるのだろうか。

30年後の社会で、自分の足で立って生きていけるのだろうか。

親として、何を残してあげるべきなのだろうか。

近年、国のレポートなどでも「これからの社会で必要なのは、正解を覚える力ではなく、
ゼロからイチを生み出し、社会課題に向き合い、他者と協働できる力だ」と語られています。

参考:経済産業省|未来人材ビジョン(令和4年5月)

そのために子どもに求められている力のひとつは「好きなことに夢中になれる力」。

これからの子育ての目的が、自ら考え、夢中になれるものがある子に育てる事であるならば。

「個室を与えること」がその助けになるなら作ればいいですし、逆に「部屋に閉じこもること」がその妨げになるなら、作らなくていいのです。

家の形は、あくまで目的を達成するための手段だと私は思います。

私たち凰建設が掲げる「家づくりで失敗する人をなくしたい」という理念には、こうした「考える暮らし」を提案する思いも込められています。

「足りない」を恐れず、「考える」を楽しむ家

そこで育つ子どもこそが、これからの時代を生き抜く力を持つのだと、私は確信しています。

YouTubeでも、子ども部屋の歴史にも触れながら子ども部屋の在り方について私の考えをお話しております。

最後に

今回は子ども部屋について紹介をしてきましたが、

家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

「家づくりに失敗したなぁ」と思う人を一人でも減らせたらと思い、

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この記事を書いた人

代表取締役

森 亨介(こうすけ)

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国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。
生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。
凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表。
元パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー