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高断熱住宅ほど夏がジメジメするのはなぜ?知っておきたい湿度の物理学

こんにちは。凰建設代表取締役の森です。
「高気密・高断熱の家にしたのに、夏はジメジメする」「エアコンをつけているのに湿度が下がらない」・・・そんな声を見聞きすることがあります。
UA値を高めた高性能な家なのに、なぜ夏に不快感が出るのでしょうか。
実はこれ「高性能ゆえに起きる」皮肉な現象です。断熱性能と湿度管理は、切っても切れない関係にあります。
今回は高気密・高断熱住宅と湿度の関係を物理の話でお伝えします。
仕組みを理解しておくだけで、不快感をぐっと改善できます。「夏のジメジメ」の正体を紐解いていきましょう。
Contents
家の内外から発生する大量の見えない水分

高気密住宅では、室内で発生する水分を意識的に排出する必要があります。

水分ってどこから来るの?窓を開けなければ入ってこないんじゃないの?

実は人間自体がどんどん水分を出してるんだよ。家族4人いるだけで、毎日10ℓ以上の水蒸気が出てるんだ。驚きでしょ?
外気を取り込む「換気」が湿度を上げるリスク
住宅には24時間換気システムの設置が義務づけられていますが、夏場には思わぬリスクがあります。
梅雨〜夏の外気湿度は70〜90%に達することも珍しくなく、この高湿度の外気を取り込むと室内湿度が一気に上がります。
全熱交換型の換気システムであれば潜熱(湿度)交換しながら換気できますが、一般的な第三種換気では外気を直接取り込むため、夏場は湿度が上がりやすいという特性があるのです。
実はこの「換気」が最も大きな湿気の流入発生源になっています。
生活するだけで1日10リットル以上の水蒸気が出る事実
1日の室内で発生知る水蒸気量をまとめると、こんなにあります。
| 発生源 | 発生量(目安) |
| 人の呼吸・発汗(4人家族) | 約4L |
| 料理 | 約1L |
| 浴槽(使用後すぐに湯を抜いた場合) | 約1L |
| 洗濯物の室内干し | 約4〜6L |
| 合計 | 10L超/日 |
2Lのペットボトル5本分以上が、人間が生活するだけで出している、目に見えない水蒸気の量です。
意識的に換気や除湿をしなければ水蒸気が室内に蓄積し続けます。この蓄積が、夏の「ジメジメ感」の大きな原因のひとつです。
見落としがちな外皮からの湿気流入
外皮の結露計算を行う時には、外皮を構成する各素材の断熱性と透湿性を並べ、水蒸気圧差と温度差をそれぞれ設定して、どの位水と熱が流入するかをシミュレーションします。
熱が流れる量は、UA値やQ値などで表記されますが、水が流れる量は住宅ルールでは取り決めは有りません。
湿気を防ぐ仕組みが無ければ、岐阜の夏の気象ですと、一日に10L~20L程度の水が壁や床や屋根を通過して入ってきます。(入ってくる量の差は家の大きさの差です。)
夏に10Lもの加湿器を家の中で運転しているのと同じ状況が起こっているのです。
そして、「夏に湿度の下がらない家」が出来てしまいます。
新築1年目特有の「コンクリートと木材の水分」
新築の家には、建材自体にも大量の水分が含まれています。
基礎コンクリートは打設後から数年かけてゆっくり水分を放出し、木材も完成後1〜2年は放湿し続けます。
この「建材由来の水分」が加わるため、新築1年目の夏は特に湿度が上がりやすいのです。
「新築なのにカビが生えた」という話の多くは、この建材水分と換気・除湿不足の組み合わせが原因です。
入居後1〜2年は特に意識的な湿度管理が必要です。
湿度は家の寿命と住む人の健康の両方に直結する問題です。
エアコンがすぐに止まってしまう「サーモオフ」とは

温度は下がっても湿度が下がらない構造
高断熱住宅は外気の影響を受けにくい構造のため、夏場にエアコンをつけると室温はあっという間に設定温度に達します。ただ、その裏に落とし穴があるのです。
エアコンは基本的に温度センサーで制御されている機械です。
エアコンは室温が設定温度に達すると、コンプレッサー(圧縮機)を自動で止めます。これが「サーモオフ」です。
空気中の水蒸気は、エアコンが動いている間だけ減っていきます。サーモオフで止まれば除湿も止まり、湿度が高いまま温度だけが下がった状態に。
「涼しいのにベタベタする」の正体はこれです。
エアコンが「除湿機」として機能しなくなる仕組み
エアコンが除湿できるのは、室内の空気が内部の冷却フィンに触れ、表面に結露として水分が付着するからです。
冷えたフィンに空気が触れることで水蒸気が水滴になり、ドレン管を通って外へ出ていく・・・これが除湿の仕組みです。
折角結露させた室内の空気が排水されることなくエアコンの中で再度蒸発して室内に戻ってくる。本来持っている除湿能力が全然発揮されずに終わってしまう。というのが、エアコンが止まると除湿が出来なくなる仕組みです。
高性能で省エネな住宅であればあるほどすぐに室温が下がるため、「エアコンは付けているのに全然除湿できていない」時間帯が長くなりがちなのです。
一般的なエアコンを最強の除湿機に変える運用術

高価なシステムに頼らず、壁掛けエアコンの設定だけで湿度を効果的にコントロールできます。

除湿するには、除湿機を別に買わないといけないの?お金かかりそう……

いやいや、普通のエアコンで全然できるよ。
ただ使い方がみんな間違ってるんだよね。
求める働きによって風量を設定する
除湿というのは、湿った空気を冷たいものに触れさせることで出来る現象で、夏のビールジョッキでも除湿ですし、冬の窓の結露も除湿と言えば除湿ということになります。
この、結露を如何に効率よく起こさせるかというのが、除湿の肝になっていきます。
そのためには、空気が触れる物体の温度を下げることが重要です。10℃に冷やしたペットボトルより、氷点下に冷やしたビール缶の方が沢山水滴がつきますね。
エアコンの場合、室外機で作った冷熱を、冷媒ガスが室内機に運び、室内機の中の温度を冷たく保持します。この、室内機の中の温度が冷たければ冷たいほど、除湿力が上がります。
室内機の中の温度を冷たいままにキープするには、あまり沢山の室温の風を室内機の中に通さない方が効率的で、エアコンの風量を弱くすることで空気がゆっくりと冷却フィンを通過し、接触時間が長くなるほど結露(=除湿)が多く起きます。
反対に、真夏のとにかく冷気を出したいという時には、エアコンの風量を自動もしくは最強にして、エアコンの効率を最大にする。というのが、家庭で簡単に出来るエアコンの運転設定になります。
温度を下げたい時は「風量強」、湿度を下げたい時は「風量弱」がエアコンを賢く使う設定です。
梅雨の湿度対策は「冷やして温める」再熱除湿
特に梅雨時の除湿は難しく、例えばこんな天気の日は洗濯物がなかなか乾きません。

雨の日は気温が上がらず、絶対湿度が高いので、空調も顕熱(温度)を下げるより潜熱(湿度)を下げる工夫が必要になります。
例えば家電のドライヤーは、温める道具です。空気を温めると、相対湿度が下がり湿気を奪う力が大きくなります。
つまり、エアコンの除湿で絶対湿度を下げつつ、何かで温度を上げる。それが最も効率の良い空気の乾かし方になります。
空気中の水を結露させつつ冷やし過ぎた分を温めれば理屈の上では再熱除湿ということになります。
水を結露させるのは除湿器やエアコンなどに限られますが、空気を温める方法はオイルヒーターやエアコン等なんでもOKです。
それを一台でやってくれるのが再熱除湿モード付のエアコンです。
冷房と暖房を同時に使うと聞くとものすごく勿体無いことをしているように感じると思いますが、見える化されていないだけで再熱除湿エアコンでも、除湿機でもやっていることは同じです。
除湿の目安は、絶対湿度換算で10g/㎏程度。それ以上やりすぎると乾燥を感じたりウイルス感染のリスクが高まりますので程々に試してみてください。
エアコンを動かし続ける勇気
「こまめに消したほうが電気代が安い」という常識は、高気密・高断熱住宅では通用しません。
エアコンを止めると、外や建材からの湿気・熱が戻り始め、再び快適にするために大きなパワーが必要になります。
起動時の電力消費は連続運転時より大きいため、頻繁なオン・オフはかえって電気代を押し上げることもあります。
夏場は24時間連続運転が基本。
「もったいない」という感覚でこまめに切るより、弱く動かし続けるほうが家にも体にも優しい選択です。
まとめ|物理学を味方につけた者だけが手にする「夏の極楽」
「高気密高断熱の家は湿度が下がらない」は大きな誤解です。
サーモオフによる除湿不足、生活由来の水蒸気、新築建材の放湿、外気の高湿度・・・これらを理解した上で、エアコンの設定(弱風・連続運転)と気密・防湿の施工精度を組み合わせれば、30年後もカビとは無縁の家を維持できます。
家は建てて終わりではなく、住みながら育てていくもの。
物理の法則を味方につけ、正しい知識を身に着ければ、梅雨~夏の極楽を手にすることができます。
最後に
今回は「高断熱住宅の除湿」について紹介をしてきましたが、
家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。
「家づくりに失敗したなぁ」と思う人を一人でも減らせたらと思い、
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