ベランダは本当に必要?未来の家計から考える、洗濯と住宅性能の話

こんにちは。凰建設代表取締役の森です。

私が住宅業界に入った2000年代前半の頃、ベランダの無い家は存在しませんでした。

ベランダの無い家、あり得ないと思いますか?べつに無くても良いと思いますか?

結論はどちらでも良いと思います。

ただ、私はいつも少し立ち止まって考えてほしいとお伝えしています。

「なぜベランダが必要だと思っているのか」を一度問い直してみると、意外と「昔からそうしてきたから」という答えが多いのです。

今回は、ベランダという設備を「生涯コスト」「物理的な乾燥の仕組み」「構造上のリスク」「予算の使い方」という四つの角度から整理してみます。

「ベランダはあって当然」という思い込みを、いったん横に置いてお読みください。

ベランダは「後から届く請求書」がある

一軒家のベランダ
ママ

ベランダって、作るのにそんなにお金かかるものなの?見た目もおしゃれだし、あると便利そうだけど。

おっぴー

作るときのお金より、作った後のお金の話をしてほしいんだよね。15年後に「こんなはずじゃなかった」ってなる人、けっこういるから。

家を建てるとき、多くの方が気にされるのは「建築費」です。

しかし、住宅に関わる生涯のお金を考えると、建築費はその一部に過ぎません。税金、光熱費、そしてメンテナンス費用として、建てた後にも長くお金が出続けます。

ベランダは、その「建てた後にお金がかかる設備」の代表格といえるでしょう。

ベランダに修繕が必要になる理由

ベランダの床面には、雨漏りを防ぐための防水層が施工されています。

FRP防水やウレタン防水など工法はさまざまですが、耐用年数はおおむね10年から15年。紫外線と雨風に常にさらされるベランダは、住宅の中でも特に過酷な環境にあります。

年数が経てば防水層は劣化し、コーキングにも細かなひび割れが生じ、やがて補修が必要になります。

ベランダの修繕が必要になるタイミング

ベランダの修繕のタイミングとして多いのが、新築から15年前後です。ちょうどお子さんの進学や教育費がかかる時期と重なることも少なくありません。

そこへ「外壁塗装と合わせてベランダの防水補修が必要です。費用は足場代込みで150〜200万円ほどです」という話が来ます。

しかも、その頃にはベランダをほとんど使っていないというご家庭も多いのです。

新築の時には、洗濯や布団はやっぱりベランダで干したいと仰います。

でもなぜか使わなくなってしまう。しばらくの間は「やっぱりベランダ要らなかったね」で済みます。

しかし10年経って「使っていないのに維持費だけかかる」という状況に直面すると、渋い顔をするお施主様も多いものです。

ベランダを作らないという選択は、この将来の出費をそもそも発生させないことを意味します。

浮いたメンテナンスの予算を教育費や家族の時間に充てる方が、長い目で見てより豊かな選択になるのではないでしょうか。

「洗濯物は外で乾かすもの」は、本当に正しいのか

ベランダに洗濯物を干す
ママ

でも洗濯物ってやっぱり外に干したほうが早く乾くし、お日さまの匂いがして気持ちいいじゃない。

室内干しって、なんとなく湿っぽくて好きじゃないのよね。

おっぴー

その「室内干し=湿っぽい」っていうイメージ、昔の家の話だよ。高断熱の家で同じことやると、びっくりするくらい早く乾くから。

「洗濯物は太陽に当てて外で乾かすもの」という感覚は、多くの方に根強くあります。

ただこれは、断熱性能が低く、室内が湿りがちだった時代の住宅で暮らした経験から来ている部分が少なくありません。

一年中、家の中の方が洗濯物がよく乾く状態があるとしたら、外に干す理由はないですよね。

高断熱・高気密住宅の室内環境は、これまでの常識がガラッと変わります。

生乾き臭は換気空調計画で解決

高気密・高断熱住宅を選んで、内気循環や換気の計画をしっかりできている家を建てるという方であれば、洗濯物は自然乾燥や、ヒートポンプ式の乾燥機でも、一部屋で完結できる可能性があります。

洗濯物が出す水分の量は計算ができます。

それを適切に空気循環させられれば、部屋干しでも数時間で洗濯物は乾くという事です。部屋干ししている部屋を除湿機や乾燥機で無理やり乾燥させる必要もありません。

「室内干し=生乾き臭」というイメージがありますが、あの臭いの原因は日光不足ではなく、乾燥に時間がかかることで菌が繁殖するためです。

空気が適切に動いている高気密・高断熱住宅の環境では、臭いは発生しにくくなります

外干しには、現代ならではのリスクもある

外干しにはメリットがある一方で、現代の生活環境では見過ごせないリスクもあります。

花粉の時期に衣類を外干しすると、繊維に花粉が付着します。軽く払った程度では完全には落ちず、そのまま室内に持ち込むことになります。

花粉症に悩むご家庭では、これが症状を悪化させる一因になることもあるのです。

また、外干しに伴うストレスは意外に多いもの。

  • PM2.5や黄砂
  • 突然の雨
  • 紫外線による色褪せと繊維の傷みなど

共働き世帯であれば、外出中の急な雨は特に困りものです。

室内干しへの切り替えは、これらのストレスをまとめて解消する手段になります。

さらに、洗濯の「脱ぐ・洗う・干す・畳む・仕舞う」という動線をランドリールームにまとめることができれば、家事の効率も大きく変わるのではないでしょうか。

国民病ともいわれる「花粉症」と高気密住宅の関係について、こちらのコラムで解説しています。

ベランダは、構造的に「弱点を作る場所」でもある

ベランダのある家
ママ

ベランダが構造的に弱点になるってどういうことなのかしら?ぴんとこないわ。

おっぴー

ベランダってね、雨漏りしやすいんだよ。屋根は水を流すためにできてるけど、ベランダはほぼ水平でしょ。そこに継ぎ目がたくさんある。

雨漏りしてくださいって言ってるようなもんだよ。

木造住宅を長持ちさせる基本は、木材を濡らさないこと、そして濡れてもすぐ乾く構造にすることです。

水は木造住宅にとって最大の敵であり、雨漏りや結露によって木材が湿り続けると、腐朽や白アリの被害につながります。

屋根は勾配があるため、雨水は自然と下へ流れていきます。しかしベランダの床はほぼ水平であり、手すり壁との接合部、サッシまわり、排水口など、水が集まりやすい「継ぎ目」が密集しているのです。

台風や集中豪雨の際には、サッシのレールから水が逆流したり、防水層のわずかな傷から水が入り込んだりするケースが起きやすいもの。

雨漏りの相談をいただく際、ベランダまわりが原因というケースは少なくありません

さらに、使われなくなったベランダは排水口のお掃除が疎かになっているケースがほとんどです。

排水口が詰まり雨が流れていかないベランダは、やはり雨漏りリスクが上がってしまいます。

ベランダをなくすという選択は、こうした雨漏りリスクの発生源を、設計の段階から取り除くことでもあります。

シンプルな屋根と垂直な壁で構成された家は雨水の処理がわかりやすく、長期的なメンテナンスの観点からも管理しやすい形といえるでしょう。

ベランダの予算を、性能に回すという考え方

ママ

ベランダをなくしてお金が浮くのもいいわね!

おっぴー

一番のおすすめは、その浮いたお金で窓を快適にすることだね。窓を変えるだけで、家の快適さがかなり変わる。

多くの会社はそこまで言ってくれないけどね。

家づくりの予算は、どこかを削ればどこかに回せます。

ベランダひとつ分の工事費は、防水、手すり、床材、板金工事などを合わせると、決して小さな金額ではありません。この予算を別の場所に充てることを、ぜひ考えてみてください。

たとえば、窓のグレードアップです。

  • アルミ樹脂複合サッシを樹脂トリプルサッシに変更する
  • 南面の大きな窓を木製サッシに変更する

こうした選択は、家の「燃費」に直結します。

冬の窓辺の冷え、結露の発生、暖房効率の低下。これらは窓の性能が低いことで起きる問題であり、逆に窓の性能を上げることで大きく改善できます。

設備機器(エアコン、給湯器など)は15年程度で交換が必要になりますが、窓は家が建っている限り機能し続けます。

一度の投資が、何十年にもわたって快適さと省エネの形で返ってくるのが、高性能な窓の特徴です。

時間が経つと維持費を求めてくるベランダと、時間が経っても家族を守り続ける高性能な窓。

限られた予算の使い方として、どちらが合理的かは、冷静に考えれば見えてくるはずです。

「ベランダがない家」を選ぶことは、変わった選択ではない

ベランダのない家
ママ

でも、ベランダのない家って、なんか物足りない感じがしないかしら。周りに話したら「変わってるね」って言われそう。

おっぴー

今は共働きも多いし、外に干す時間がない家庭も増えてるよ。

「当たり前」が変わってきてる。そもそも、誰かに合わせて作った家って、誰の家なの?って話でしょ。

「ベランダはあって当たり前」という感覚は、どこから来るのでしょうか。

多くの方が、アパートや実家など断熱性能の低い住宅で育ってきました。そこでは室内が湿りやすく、洗濯物が乾きにくかったのです。

だから「洗濯物は外で干すもの」という習慣が自然に身についています。その経験は間違いではなく、当時の住宅環境では合理的な選択だったといえるでしょう。

ただ、家の性能が変わると、合理的な選択も変わります

高断熱・高気密住宅では室内環境を自分でコントロールできるため、外の天候や花粉、排気ガスに左右されない生活がしやすくなります

住宅展示場やカタログでベランダが目立つのは、見た目として映えやすいからという面もあるでしょう。

しかし、実際の暮らしの中でベランダをどれだけ活用しているかを振り返ると「思っていたより使っていない」というご家庭は多いものです。

家づくりは、他の家と同じにする必要はありません。自分たちの暮らし方に合った選択を、習慣や周囲の目ではなく、生活の実態と長期的なコストから考えてみてほしいと思います。

ベランダをなくすことで生まれた予算とスペースを、どう使うか。その選択が、10年後・20年後の暮らしの質に少しずつ効いてきます。

ただし、ベランダは絶対に作ってはいけないと言うつもりはありません。

目的が例えば、ベランピングや日光浴を楽しむということであれば全然良いと思います。

10年以上前になりますが、北側に好きな山が見えるというご夫婦の家づくりでベランダを作りました。そのベランダは今でも有意義に使ってもらえています。

家づくりに「唯一の正解」はありませんが「後悔しない選択」をするために、一度立ち止まって考えてみてください。

その時間が、家づくりをより自分のものにしてくれるはずです。

最後に

今回は「ベランダは本当に必要?」というテーマについて紹介をしてきましたが、

家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

「家づくりに失敗したなぁ」と思う人を一人でも減らせたらと思い、

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この記事を書いた人

代表取締役

森 亨介(こうすけ)

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国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。
生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。
凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表。
元パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー