岐阜で理想の間取り・暮らし方を考える|後悔しない住宅設計の基本と実例|凰建設

渡り廊下がつなぐ平屋の二世帯住宅

凰建設(岐阜県岐阜市)は、代表の森亨介(森こうすけ)が10年近くほぼ毎日メールマガジンを配信し、高気密・高断熱住宅を中心に家づくりの知見を発信し続けてきました。数多くの新築・リノベーションの間取り設計に携わる中で、森が繰り返し伝えているのが「家を作るんじゃない。暮らしを作る」という考え方です。

このページでは、凰建設が公開してきた「間取り・暮らし方」に関するお役立ちコラム5件を体系立てて整理し、あわせて岐阜での家づくり相談の中でよく話題になる論点(敷地の広さ、二世帯・離れ、収納やベランダの考え方など)を紹介します。断熱・気密のように実測数値を積み重ねてきた分野とは違い、間取りは「正解が一つに決まらない」領域です。だからこそ、判断の軸になる考え方を先に押さえておくことが、後悔しない家づくりにつながります。

おっぴー

『子ども部屋は絶対必要』って思ってません? 実はそうとも言い切れないんです。

ママ

え、うちも子ども部屋、当然作るものだと思ってた…

この記事で分かること

  • 間取り設計で最初に考えるべきこと、押さえておくべき5つの基本ポイント
  • 子ども部屋・収納・ベランダなど、多くの家庭が悩む個別テーマの考え方
  • 岐阜(敷地に余裕がある地域)ならではの間取りの落とし穴
  • 凰建設のお役立ちコラム5件の内容と、それぞれの読みどころ
  • 間取り・暮らし方にまつわるよくある疑問への回答
  • 森こうすけの視点(自邸での実践や幼少期の経験)

板張りの吹き抜けで繋がる二世帯住宅

1. 間取り設計の基本的な考え方

1-1. 間取りは「暮らしの器」であり、部屋のパズルではない

凰建設では、間取りを単なる部屋の配置図とは捉えていません。朝起きてから夜眠るまでの家族の動き(生活動線)、家族がどこで顔を合わせるか、何を大切に生きるかを映し出す「暮らしの器」だと位置づけています。そのため、お客様に打ち合わせの場で最も伝えてほしいのは、完成された間取り図そのものより、頭の中にある断片的な「理想の暮らし」のイメージだとしています(詳しくは後述のコラム「住宅の間取り設計で失敗しないために」を参照)。

1-2. 使いやすさより先に、構造・耐震性を確認する

間取りを家族や友人に見てもらい、色々な意見をもらうのは家づくりの楽しい時間ですが、メルマガでは「使いやすい使いにくい以前に押さえておくべきこと」として、構造・耐震性を最初に挙げています。屋根から始まる荷重の流れが地面に素直に伝わる構造か、地震力などの横からの力に全方位でバランスよく耐えられる設計か。数多くのリノベーション案件を見てきた中で、構造的に無理をした間取り(2階の重い壁の下が大きな吹き抜けになっているなど)は、必ず何らかの歪みを抱えているといいます。

1-3. 収納は「量」より「場所」と「使い方」

「収納はとにかくたくさん欲しい」というのは、ほぼすべての施主から出る要望です。しかし凰建設では、平面図上の収納面積の割合(いわゆる収納率)を重視する考え方には距離を置いています。かつては住宅の収納面積が延床の13%以上あるかを一つの目安にする風潮がありましたが、昔ながらの奥行91cm(3尺)の収納は、洋服など多くの物には奥行が深すぎて、実際に使える面積は半分〜3分の2程度に落ちてしまうといいます。大切なのは面積の割合そのものではなく、「収納として使える、あるいは収納家具を後から置ける壁面がどれだけあるか」という視点です。

収納計画を考える際のもう一つの視点が「4次元思考」です。今しまいたい物が何かだけでなく、「それはいつまでそこにあるのか」という時間軸を加えて考えることを勧めています。ベビーカーは10年後も使うのか、アウトドア用品は増えるのか減るのか。物の量は暮らしの変化とともに変わっていくため、収納計画もその変化を織り込んで考える必要があるという考え方です。

1-4. 動線と家事のしやすさ

回遊動線(家の中をぐるっと回れる動線)は間取りの人気テーマの一つですが、凰建設ではむやみに勧めることはしていません。回遊動線を成立させるには、動線の内側・外側の壁が「無駄にならない壁」になっていることが条件で、そうでなければただ行き止まりをなくすだけの、収納にも使えないもったいない廊下になってしまいます。また、回遊動線をきれいに住みこなしている家庭は総じて持ち物が少ない傾向があり、物を多く持つ家庭にはあまり向かない場合もあると指摘しています。

家事のしやすさについては、洗濯を例に「脱ぐ・洗う・乾かす・仕舞う」の動線を一箇所にまとめられるかが鍵になるとしています。従来の家では、脱衣・洗濯機置き場・ベランダ・タンスがそれぞれ別の場所にあり、家中を行き来する必要がありましたが、洗濯機の設置場所と乾燥(機械乾燥または自然乾燥)、収納までを一つの部屋で完結できると、家事の負担は大きく変わるといいます。

1-5. 将来の変化を見据えて設計する

家は建てて終わりではなく、何十年という時間をかけて家族とともに変化していきます。凰建設では「後でお金がかかるような仕様にしない」ことを徹底し、断熱など一度施工すれば生涯性能が続く基本性能に予算を配分すべきだという考え方を取っています。

将来の変化への備えという観点では、あえて個室を作らない、あるいは最小限にとどめる設計も選択肢の一つとして紹介されています。予算を抑えるために家の面積そのものを小さくする工夫の中で、個室を設けずLDKの一角にソファーベッドなどを置いて寝室を兼ねる計画も実例として挙げられており、断熱・気密性能が高い家であれば、こうした「個室レス」に近い暮らし方も十分に成立するとしています。

また、将来の身体の変化(介護など)を見越した間取りにするべきかという相談もありますが、これについては「必ずしもする必要はない」という立場です。実際に身体の状況が変わってみないと最適な住環境は分からないため、最初から使うかどうか分からない仕様にするより、後から直しやすい構造にしておく方が現実的だという考え方です。ただし、直しやすい家とそうでない家があるのは事実で、玄関ドアや掃き出し窓の交換一つとっても、型式適合認定の要件から外れてしまうケースがあるなど、リノベーションのしやすさを見据えた設計判断が必要になる場面もあります。


2. 岐阜特有の論点:敷地に余裕がある地域だからこその落とし穴

2-1. 「敷地が広いから」際限なく大きくなりがちな家

森は横浜で設計の仕事をしていた時代、建蔽率・容積率の制約が厳しく、土地が決まった時点で建てられる上限の大きさがほぼ決まっていたため、平均30坪程度の制約の中でいかに空間を有効活用するかが設計の腕の見せ所だったと振り返っています。一方、岐阜で設計をしていると「ここはもう少し広げて」という要望が敷地の余裕からポンポン出てくるといいます。

ここで参考になるのが、建築費用と50年間のランニングコストを合わせた生涯コストの試算です。凰建設のメルマガでは、家が1㎡大きくなるごとに、建築費とその後50年の維持コストの合計が約60万円ずつ増える(坪あたり換算で約180万円)という考え方が紹介されています。100㎡(30坪)なら約6,000万円、200㎡(60坪)なら約1億2,000万円という規模感です。もちろん家の仕様によって金額は大きく変動しますが、「敷地に余裕があるから広くする」という判断をする前に、その面積が生涯コストとしてどれだけの金額に相当するかを意識しておくことをすすめています。

2-2. 実家・離れの活用と二世帯住宅

敷地に余裕がある地域ならではの相談として多いのが、既存の建物(母屋・離れ)がある敷地での建て替えです。メルマガでは、大きな敷地の離れの建て替え相談を例に、子ども3人にそれぞれ個室(4.5畳)を用意しようとすると廊下等を含めて8坪ほど必要になり、その分リビングや収納を削ることになる、という試算を紹介しています。同時に、母屋側に空き部屋が多く残っているケースも岐阜ではよくある話だとし、新築側だけで完結させず敷地全体で部屋の使い方を考える視点を提案しています。

二世帯住宅についても、建築時のコストや不動産取得税・固定資産税・相続税など、1軒を2つ建てるより得になる場合が多いとした上で、うまくいくかどうかの分かれ目は間取りよりも人間関係にあるとしています。実際の設計事例として、義父母世帯と2階リビングを吹き抜けでつなぐ提案をした話も紹介されており、単純な「同居か別居か」ではなく、家族関係に合わせた距離感の設計が重要だという立場です。

この「実家・空き家をどう扱うか」というテーマは、新築を検討する前に既存住宅の活用を考える「ゼロ・ステップ」という考え方にもつながります。詳しくは後述のコラム「空き家の相続問題を回避する『家づくりのゼロ・ステップ』」で扱っています。

2-3. 高気密・高断熱を前提にした暮らし方の転換(ベランダ・洗濯)

凰建設は全棟で気密測定を行い、C値0.1〜0.2程度という高い気密性能を継続的に記録してきました(詳しくは「断熱・気密」を参照)。この性能を前提にすると、「洗濯物は外に干すもの」「ベランダは当然あるもの」といった従来の間取りの常識も見直しの対象になります。室内干し=生乾き臭というイメージは、断熱性能が低く室内が湿りがちだった時代の住宅の経験に由来するものであり、高気密・高断熱住宅で換気・空調計画が適切であれば、部屋干しでも数時間で乾き、臭いも発生しにくいとしています。ベランダの防水は10〜15年で劣化し、外壁塗装と合わせて100〜200万円ほどの修繕費がかかることも多いため、性能を前提に「ベランダをなくして予算を窓の性能に回す」という選択肢も紹介されています(詳しくは後述のコラム「ベランダは本当に必要?」を参照)。


3. あわせて読みたい:間取り・暮らし方のお役立ちコラム

凰建設のWEBサイトでは、2014年から「お役立ちコラム」を継続的に公開しています。その中から「間取り・暮らし方」に分類される5件を紹介します。いずれも実際の設計現場での考え方や事例をもとにしたコラムです。

  • 住宅の間取り設計で失敗しないために|理想の暮らしをカタチにする方法(2025年7月公開) 間取り設計で最初に考えるべき「理想の暮らし」の描き方から、全体のバランス・引き算のデザイン・構造の安全性・将来の変化への備え・照明や窓の計画まで、間取り設計の基本を5つのポイントに整理したコラムです。「来客を意識しすぎない」「子ども部屋を快適にしすぎない」など、失敗しがちな5つの注意点も紹介しています。

  • 子ども部屋はいらない?自分で考える子どもを育てる住まい方(2025年12月公開) 子ども部屋を「与えすぎない」ことが自立心や問題解決力を育むという考え方を、子ども観の歴史的な変遷(ルソー、フレーベル、ケラーマンら)や国内の研究も引きながら解説しています。森自身が自邸に子ども部屋を設けなかった実例や、子どもとの対話の具体例も紹介されています。

  • 空き家の相続問題を回避する「家づくりのゼロ・ステップ」!家は建てるべきでない?(2026年1月公開) 日本に約900万軒存在する空き家の現状を踏まえ、新築を検討する前に「本当に新築が必要か」を問う「ゼロ・ステップ」を提案するコラムです。相続予定の不動産が複数ある家庭の実例、リノベーションによって1,000万〜2,000万円のコストが浮く可能性、住宅診断(ホームインスペクション)の重要性などを扱っています。

  • ベランダは本当に必要?未来の家計から考える、洗濯と住宅性能の話(2026年4月公開) ベランダを「生涯コスト」「乾燥の仕組み」「構造上のリスク」「予算の使い方」の4つの角度から整理したコラムです。防水修繕費の相場、高気密・高断熱住宅での室内干しの実態、ベランダまわりが原因の雨漏り相談の多さ、浮いた予算を窓の性能に回すという考え方を紹介しています。

  • 子を育てるための巣としての家を考える(2017年5月公開) 「子を育てるための巣」という視点から住まいを考える、比較的初期のコラムです。子ども部屋が必要な期間は住宅の寿命のうち1割程度に過ぎないとし、長期的な目線で間取りを設計する重要性を、生き物の巣づくりに例えて解説しています。

関連するメールマガジンバックナンバー

「間取り・暮らし方」に関連するメルマガバックナンバーの一部です。


おっぴー

正直言うと、『収納は多ければ多いほど安心』も、実は思い込みだったりします。

ママ

そうなの? 収納は多い方がいいと思ってたけど…

4. よくある質問

Q. 子ども部屋は絶対に必要ですか? 必須ではありません。凰建設では、子ども部屋を「少し足りない」くらいの環境にする、あるいは作らないという選択肢も積極的に提案しています。個室を先に与えるより、家族で「なぜ必要か」を対話しながら、必要になった時点で空間を用意する方が、子どもが自分で考え工夫する力につながるという考え方です。ただし、これは各家庭の教育方針によるところが大きく、「個室が必要ない」と断定するものではありません。

Q. ベランダは作らない方がいいのでしょうか? 一律に不要とは言えません。防水層の耐用年数は10〜15年程度で、外壁塗装と合わせて100〜200万円ほどの修繕費がかかることが多く、雨漏りの原因になりやすい部位でもあります。一方で、日光浴やベランピングなど明確な用途がある場合は作る価値があるとしています。高気密・高断熱住宅であれば室内干しでも数時間で乾く環境をつくれるため、「昔からそうだったから」ではなく、実際の使い方から判断することをすすめています。

Q. 収納はとにかく広く作った方が安心ですか? 必ずしもそうとは限りません。収納面積の割合(収納率)そのものより、「収納として使える壁面がどれだけあるか」「奥行きが用途に合っているか」の方が重要だとしています。特に奥行91cm(3尺)の従来型収納は、洋服など多くの物には深すぎて使い勝手が悪くなりがちです。今しまいたい物だけでなく、それが将来も残るのかという時間軸(4次元思考)で収納計画を考えることをすすめています。

Q. 回遊動線にすれば暮らしやすくなりますか? 条件次第です。回遊動線の内側・外側の壁が収納や眺望など「無駄にならない壁」になっていることが前提で、そうでなければ単に行き止まりをなくしただけの、収納力を失った間取りになりかねません。また、持ち物が多い家庭には向かない場合もあるため、家族の持ち物の量と合わせて検討することをすすめています。

Q. 実家を相続する予定がありますが、新築とリノベーションのどちらがいいですか? まずは新築ありきで考えず「本当に新築が必要か」を問う「ゼロ・ステップ」を踏むことをすすめています。骨組みがしっかりした実家であればフルリノベーションにより新築と同等の性能を確保しつつ、1,000万〜2,000万円ほど費用を抑えられる可能性があります。ただし、すべての建物がリノベーションに向いているわけではなく(築20〜30年のプレハブ住宅などは改修で違法建築状態になるリスクもあります)、専門家による住宅診断を受けた上で判断することが重要です。

Q. 二世帯住宅は同居しない方がうまくいきますか? 一概には言えません。建築時のコストや各種税金の面では、1軒を2つ建てるより二世帯住宅の方が有利になることが多い一方、うまくいくかどうかは間取りより家族関係に左右される部分が大きいとしています。義父母世帯との距離感を間取りでどう設計するか(たとえば2階リビングを吹き抜けでつなぐのは有りかなど)、家族ごとの関係性に合わせた工夫が必要です。


陽光注ぐ二世帯住宅
おっぴー

回遊しすぎて物の置き場が無いプランはあるあるですね

ママ

回遊動線はいいと思ったんだけど、収納が少なくなるのは考えものね

5. 森こうすけの視点

  • 自邸に子ども部屋を作らなかった実践: 「子ども部屋=必要なもの」とは考えておらず、自身の自邸にも子ども部屋を設けませんでした。子どもが「自分の部屋がほしい」と言い出した時こそ、「なぜ必要なのか」を一緒に考える対話のチャンスだと捉えており、自分で考え、交渉して得た空間の方が大切にされるという考え方を実践しています。

  • 幼少期に離れの一室で育った経験: 敷地の有効活用について発信する中で、自身の幼少期の実例にも触れています。父母のいない別棟で、耳の遠いひいおばあちゃんの隣の6畳間を自分で選び、ずっと使っていたというエピソードです。新築で4.5畳の子ども部屋を無理に増やすより、既存の建物にある空き部屋を活用する方が、子どもにとって案外良い環境になり得るという実感につながっています。

最後に

今回は「間取り・暮らし方」について紹介をしてきましたが、家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

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この記事を書いた人

代表取締役

森 亨介(こうすけ)

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国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。
生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。
凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表。
元パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー