岐阜で地震に強い家を建てるなら知っておきたいこと|構造・耐震まとめ|凰建設

木造の耐震・断熱リフォーム実例

凰建設(岐阜県岐阜市)は、代表の森亨介(森こうすけ)が10年近くほぼ毎日メールマガジンを配信しながら、高気密・高断熱住宅を中心に家づくりの知見を発信し続けてきました。

凰建設は、許容応力度計算による耐震等級3を標準仕様としており、耐震診断の指定業者としても地域の耐震化に関わってきました。また、能登半島地震以降は岐阜県の応急仮設木造住宅建設の主幹事工務店にも任命されています。こうした実務の裏付けとあわせて、構造・耐震についての基礎知識を整理していきます。

おっぴー

『通し柱がたくさん入ってる家は地震に強い』って思ってません? 実はそう単純じゃないんです。

ママ

え、通し柱が多いほど安心だと思ってた…

この記事で分かること

  • 耐震等級・構造計算・制振/免震など、構造・耐震の基本用語の意味
  • 通し柱の要不要、柱の太さと耐震性の関係
  • 地盤調査・地盤改良の必要性と工法の選び方
  • 凰建設が耐震等級3(許容応力度計算)を標準とする理由
  • 岐阜(地域)における防災・構造の論点
  • お役立ちコラム7件の内容と、それぞれどんな疑問に答えているか

孫たちが遊びに来る平屋の耐震リフォーム

1. 耐震等級とは何か

耐震等級は、「住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度の評価項目のひとつで、2000年に制度化されました。建物の耐震性能を1から3までの等級で表し、数字が大きいほど耐震性能が高いことを示します。

  • 耐震等級1: 建築基準法レベル。震度6強〜7程度の地震に「1回は耐えられる」ことを想定した最低基準
  • 耐震等級2: 等級1の約1.25倍の強度
  • 耐震等級3: 等級1の約1.5倍の強度。消防署や警察署など防災拠点になる建物にも求められる水準

1981年5月以前の「旧耐震基準」の住宅は震度5強程度までしか耐えられない設計となっており、基礎の強度不足や壁量・バランスの不均衡、接合部の弱さなどのリスクを抱えていることが多いとされています。1981年6月以降の「新耐震基準」では耐震性が大きく向上しましたが、それでも設計・施工の精度や経年劣化によって、十分な耐震性能が確保されていないケースがあることには注意が必要です。

耐震等級3が重視される理由として、熊本地震(震度7が連続して発生)のデータが引用されることがあります。耐震等級3の住宅はそのすべてが地震後も住み続けられた(住み続けられる率100%)一方、耐震等級1の建物では住み続けられる率がおよそ60%にとどまったという調査結果があります(出典:一般社団法人くまもと型住宅生産者連合会「耐震等級3のススメ」)。

2. 構造計算にも種類がある

「構造計算をしています」という会社は増えましたが、その中身は一様ではありません。木造住宅で使われる構造計算には、検討する要素の少ないものから多いものまで、主に次のような種類があります。

構造計算の種類検討する要素
壁量計算壁の強度と量のみを確認する、最も初歩的な方法
許容応力度計算壁だけでなく、柱・梁など部材一本一本が壊れないかを検証
保有水平耐力計算建物が耐えられる水平力の限界を求める
限界耐力計算建物自体の限界を導き出す
時刻歴応答計算揺れ戻しの復元力まで解析する、最も精緻な方法

木造住宅では一般的に、許容応力度計算まで行えば十分とされています。凰建設では許容応力度計算による耐震等級3を標準としており、社内で構造計算が完結できる体制(「もしくはできるけど外注」)であることを、施工会社選びの判断材料の一つとして紹介しています。

なお、4号特例(木造2階建てなど小規模住宅で構造計算書の確認申請への添付が不要とされてきた制度)は2025年4月の法改正で見直され、審査が強化される方向に進んでいます。壁量計算だけでなく、基礎や水平構面まで含めた検討が重要になります。

3. 制振・免震とは何か、耐震との違い

  • 耐震: 建物自体を固く強くすることで、地震の揺れに耐える考え方
  • 制振: 建物に取り付けたダンパーやテープなどの部材が、地震のエネルギーを吸収し、建物の変形を抑える考え方
  • 免震: 建物と基礎の間に免震装置を設け、地震の揺れそのものを建物に伝えにくくする考え方(木造住宅での採用は限定的)

「制振があれば耐震等級2相当でも良いのでは」という質問は根強くありますが、これについては実験データに基づいた考え方が示されています。日本建築学会に発表された実験研究(「粘弾性体テープを用いた木造制震住宅に関する実験的研究」2013年8月)によれば、阪神大震災の80%相当の揺れを1回受けた場合、耐震等級1+制振の建物は耐震等級3の建物(変形量約3cm弱)に対して約1.5倍(約5cm弱)の変形量になったとされています。

さらに、阪神大震災100%相当の揺れを8回繰り返し加える実験では、耐震等級3のみの建物は10cm以上変形したのに対し、耐震等級3+制振の建物は1.5cm程度の変形にとどまったといいます。変形が大きいと気密シートが破れるなど、耐震性以外の性能にも影響が及びます。この結果から、まず変形量の少ない耐震等級3を確保したうえで、必要に応じて制振を組み合わせるという考え方が基本になります。制振の方式には制振テープやダンパー方式などがあり、いずれも「建物全体のバランスや相性」を踏まえた設計が重要とされています。

4. 通し柱は必要か、柱の太さと耐震性の関係

「通し柱がたくさん入っている家は地震に強い」というイメージは根強くありますが、実態はやや複雑です。

  • 通し柱: 土台から軒まで、つなぎ目なく通っている柱
  • 管柱: 1階と2階で分かれている柱

通し柱には、上下階の力を一体的に伝え、建物のねじれや変形を抑える構造的な強みがあります。一方で、梁が通し柱を貫通する「仕口」の加工によって、柱の断面はかなり削られてしまいます。現在一般的な通し柱の太さ(4寸角=約120mm角程度)では、梁の貫通によって元の太さがほとんど残らないケースもあり、「通し柱を入れさえすれば強い」とは言い切れません。

住宅金融支援機構の調査によれば、通し柱のない家の割合は2012年には1割未満だったのに対し、2023年の調査では4割を超えているとされています(ウッドショックによる資材高騰でのコストダウンが一因とされています)。現代の耐震設計では、通し柱の有無よりも次の要素が重視されます。

  • 柱や耐力壁の配置バランス(偏りがあるとねじれ変形の原因になる)
  • 直下率(上下階で柱・壁の位置が揃っている割合)
  • 金物補強による接合部の強度(通し柱がない場合は「梁勝ち」として梁を優先して通し、金物で補強する方法も合理的とされる)
  • 構造計算による裏付け

つまり、通し柱を入れるかどうかは「絶対的な正解」ではなく、間取りや直下率、金物補強の方針とあわせて設計段階で判断すべき要素だという考え方です。

5. 地盤調査・地盤改良の基礎知識

建物の耐震性能がどれだけ高くても、地盤が軟弱であれば不同沈下などのリスクが残ります。1995年の阪神・淡路大震災を経て、2000年の建築基準法改正により、地盤調査の結果に基づいて基礎構造を設計することが義務付けられました。

調査方法の違い

調査方法特徴費用目安
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)戸建住宅で最も一般的。ロッドを回転貫入させ地盤の硬さを数値化5万〜10万円程度
ボーリング調査精度が高いが高額。中高層建築物向け1地点20万〜30万円前後
表面波探査法非破壊型。振動・騒音が少ない10万〜15万円程度

地盤改良が必要な場合の主な工法

工法適したケース費用目安
表層改良工法地表から2m以内の浅い軟弱層10万〜30万円程度
柱状改良工法支持層が地下2〜8m程度40万〜80万円前後
鋼管杭工法支持層が深い、狭小地、隣接建物との距離が近い100万円以上になることも

地盤改良を行わずに建築した場合、不同沈下などの修復には数百万円単位の費用がかかることがあり、地盤調査を行っていないと住宅瑕疵担保責任保険の対象外になるリスクもあります。土地購入前でも、古地図や航空写真、国土地理院の「土地条件図(地形分類図)」、ハザードマップ、近隣の建物の傾き・ひび割れの有無などから、ある程度の地盤リスクを予測することは可能です。

なお、地盤改良(特に柱状改良)を行った基礎は将来の解体コストが上がる傾向があるという指摘もあります。1980年代以前の家の解体費用が200万〜300万円程度だったのに対し、地盤改良を伴う現在の基礎では解体費用が400万円以上になることもあるとされ、「建てるときの性能」だけでなく「将来解体・更新するときのコスト」まで見据えた地盤・基礎の選択が意識されるようになってきています。


6. 岐阜における構造・耐震の論点

水害リスクとハザードマップ

岐阜地域は地震だけでなく、水害への備えも欠かせない地域です。土地選びの段階では、国土交通省の「重ねるハザードマップ」で洪水・土砂災害・津波などの想定リスクを確認したうえで、想定浸水深や被害範囲を踏まえて住み続けられる場所かどうかを判断することが推奨されています。

能登半島地震の教訓と、岐阜県の応急仮設住宅

2024年の能登半島地震では、石川県内で3万棟の建物が全半壊し、仮設住宅の建設は思うように進みませんでした。石川県が全国木造建設事業協会と災害協定を結んだのは発災後の2024年1月18日で、結局、仮設住宅建設の主幹事工務店(自治体との窓口となり予算確保や人員手配を担う工務店)を担ったのは、遠く離れた熊本の会社だったといいます。

凰建設は熊本地震の発生以来、岐阜県との間で応急仮設住宅の設計や建設実証実験を続けてきました。その積み重ねを経て、2024年末には岐阜県の応急仮設木造住宅建設の主幹事工務店に任命されています。岐阜県で能登半島地震クラスの災害が起きた場合、1000戸単位の仮設住宅供給に関わる可能性があるとされ、県内外の建築会社と連携しながら供給体制を整える取り組みが進められています。

能登半島地震では、2000年以降に建てられた建物の無被害率が65.5%だった一方、建物全体でみると無被害率は21.6%にとどまったというデータも紹介されています。新しい基準の建物であっても無被害率が7割に届かない現実を踏まえ、これから家を建てるのであれば、許容応力度計算による耐震等級3を前提に考えることが望ましいという立場です。


7. あわせて読みたい:構造・耐震のお役立ちコラム

凰建設のホームページに掲載している「構造・耐震」カテゴリのお役立ちコラム7件です。それぞれの記事で扱っているテーマと、ひとことでの要点をまとめました。

関連するメールマガジンバックナンバー

「構造・耐震」に関連するメルマガバックナンバーの一部です。


おっぴー

正直な数字を言いますけど、能登半島地震では、新しい基準の建物でも無被害率は65.5%止まりでした。

ママ

え、そんなに低いの!? 新しい基準なら大丈夫だと思ってた…

8. よくある質問

Q. 耐震等級3は本当に必要ですか?等級1や2ではダメですか? 耐震等級1は建築基準法レベルの最低基準で、1回の大地震には耐えられても、その後の余震に耐えられる保証はないとされています。熊本地震のデータでは、耐震等級3の住宅は地震後もすべて住み続けられた(住み続けられる率100%)のに対し、耐震等級1では約60%にとどまったという結果が示されています。凰建設では許容応力度計算による耐震等級3を標準としています。

Q. 構造計算をしていると言われても、どこまで信用していいですか? 構造計算には壁量計算から時刻歴応答計算まで種類があり、「構造計算をしています」という言葉だけでは中身が分かりません。木造住宅では許容応力度計算まで行うことが望ましいとされており、その計算を社内で完結できる体制かどうか(できるけど外注か、できないから外注か)も、依頼先を見極める視点の一つです。

Q. 制振や免震があれば、耐震等級を下げても大丈夫ですか? 実験データによれば、耐震等級1+制振と耐震等級3では、繰り返しの地震における変形量に大きな差が出ることが分かっています。制振はあくまで「耐震等級3を確保したうえでの上乗せ」と位置づけ、制振があるからといって耐震等級を下げてよいという考え方はとっていません。

Q. 通し柱がない家は地震に弱いですか? 通し柱には上下階を一体化させる構造的な強みがありますが、現代の細い通し柱では梁の貫通によって断面がほとんど残らないケースもあります。通し柱の有無そのものよりも、柱・耐力壁の配置バランス、直下率、金物補強、構造計算の裏付けの方が耐震性を左右するというのが基本的な考え方です。

Q. 地盤調査で改良が必要と言われたら、その土地はあきらめるべきですか? 軟弱地盤と診断されても、表層改良・柱状改良・鋼管杭工法など、地盤の状態に応じた改良工事によって安全な建築は可能とされています。重要なのは、調査結果を早い段階で把握し、費用(表層改良で10万〜30万円、柱状改良で40万〜80万円、鋼管杭で100万円以上が目安)や工期への影響を織り込んだ資金計画を立てることです。

Q. 岐阜で家を建てるうえで、地震以外に気をつけることはありますか? 岐阜地域では水害への備えも重要とされています。国土交通省の「重ねるハザードマップ」で洪水・土砂災害・津波などの想定リスクを確認し、想定浸水深や被害範囲を踏まえたうえで土地を選ぶことが、防災の出発点になります。

(※上記Q&Aは、お役立ちコラム7件およびメルマガ本文の内容を土台にしています。個別の論点については各コラム・バックナンバーアーカイブで詳細を参照できます。)


終の棲家の耐震リフォーム
おっぴー

正直な数字を言いますけど、能登半島地震では、新しい基準の建物でも無被害率は65.5%止まりでした。

ママ

え、そんなに低いの!? 新しい基準なら大丈夫だと思ってた…

9. 森こうすけの視点

  • 能登半島地震を経て、岐阜県の応急仮設住宅の担い手に: 凰建設は熊本地震の発生以来、岐阜県との間で応急仮設住宅の設計や建設実証実験に関わり続けてきました。その積み重ねを経て、2024年末に岐阜県の応急仮設木造住宅建設の主幹事工務店に任命されています。「本当は、災害が起きても壊れる家がなく、そのまま住み続けられる社会をつくるのが理想」だとしながらも、仮設住宅であっても「昔住んでいた古い家よりも暖かくて快適なものにしていきたい」という姿勢で取り組んでいます。
  • 阪神・淡路大震災と防災士としての活動: 阪神・淡路大震災が起きた当時、森は中学1年生でした。現在は防災士・応急危険度判定士の資格を持ち、消防団活動にも参加しています。「防災は自助・共助・公助の順番で大事になる。1人1人が一つでも上のステージに行けるようにするのが本当に大事。だから耐震等級3」という考え方を、日々の情報発信の中でも繰り返し伝えています。
  • 耐震診断の指定業者として: 凰建設は1981年以前の旧耐震基準の建物を対象とした耐震診断の指定業者になっており、毎年数件の診断を担当しています。新築では耐震等級3を標準としつつ、既存住宅については無理のない範囲での耐震化(評点1.0を目指す)を現実的な着地点として位置づけています。

最後に

今回は「構造・耐震」について紹介をしてきましたが、家づくりにはまだまだたくさんの落とし穴があります。

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この記事を書いた人

代表取締役

森 亨介(こうすけ)

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国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。
生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。
凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表。
元パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー