これまでお届けしてきたお役立ち情報や業界のリアルなお話を振返りでご覧いただけます。最新のメールマガジンは申込後に購読が可能です。

空調=エネルギー差×風量

温熱と住宅性能

凰建設の森です。

本日から関東地方へ。
今日は東京の上石神井
明日は山梨の甲府
明後日は栃木の宇都宮

木曜日に岐阜に帰ってきます。
今日は主に空調の実測に。

空調設計講座で、発表に
使われた案件が完成すると、
遊びに来てくださいとお声がけを
頂く事があります。

その時は、発表資料と実際が
どの程度合っているか、
つまり、想定通りの空調が
できているかどうかを測る。

空調設計において、
ある任意の部屋が必要とする
エネルギー負荷を算出したあとに
その部屋に適切にエネルギーを
送ってあげればいい。

それがいわゆる空調計画。

例えば子ども部屋の冷房負荷が
350Wだったとします。

350Wをどうやって作るか。
部屋の温湿度が26℃60%
という場合その空気が持つ
エネルギー量は19.5Wh/m3です。

ここにエネルギー量が9.5Wh/m3の
空気をぶつけるとしますと、
350÷(19.5-9.5)=35m3/h
の空気を送ればいいという事に。

なるほど簡単じゃないか
と思われるかと思います。
9.5m3/hは、10℃96%
みたいな空気になりますが、
これ、エアコンから吹き出す
空気そのままくらいのもの。

よくある、小屋裏の空調室で
作る空気って、20℃75%
みたいな感じですが、
その空気だと16.0Wh/m3。

350÷(19.5-16.0)=100m3/h

その部屋には100m3/hの
空気を入れて出さないと
空調は上手く行かない
という事になります。

ここで、よくある失敗例。

①小屋裏の空気のエネルギーが
圧倒的に不足しています。

②そんなに風量が必要だとは
思っていませんでした。

③入る(または出る)分しか
考えていませんでした。

20℃75%で16.0Whですが、
それが22℃75%になると
18.0Wh/m3ですので、
必要風量は233m3/h
23℃75%だと700m3/h
必要だという事になります。

小屋裏の夏型結露を
恐れるあまり空気のエネルギー差を
抑えてしまったため、
必要風量が現実的じゃない
数字になってしまうのが①

100m3/h程度でも、
まあまあの音が出る
送風機が必要です。

それを簡単な壁付けファン
(風量50~80m3/h)
程度で済ませようと思うから
どれだけ小屋裏を冷やして
もまだ追いつかない。というのが②

エネルギー差、風量共に
足りているはずだけど、
なぜか部屋は涼しくならない。

部屋を閉め切って、
空気を送る計画だけど、
その部屋からどうやって
排気され、再度エアコンまで
空気が戻っていくのかを
全く想定していないのが③

空気のエネルギー差と風量を
適切に計算して空調設計を
している人なんて、
日本中探しても本当に
一握りの存在です。

恐らく、このメルマガを
読んでいる多くのプロも、
今日の「○○Wh/m3」
ってなに?なに?その単位
初めて聞いたし、
そんな風に計算が出来るの?

って思っているはずです。

分からないから、
全然足りないファンをつけて
効かないって言われたり、
過大なファンをつけて
うるさいなって思われたり、
そもそもファンなんていらない
所にわざわざファンをつけて、
冷えすぎる部屋と冷えない部屋を
作ってしまう原因になったり。

よく知らない人、自信がない人ほど、
家の中に沢山のファンを設置します。

結果として家の中の静寂性が
どんどん損なわれていきます。

大学で環境の授業をする時に、
音の単元になると、まずは普通に
授業を始めます。

じゃあ、ここで「静か」を
体感してみますので、
皆さん話さないでください。

と言います。
静かになったと思う人?
って聞くと全員手が上がります。

じゃあ、これは?と、
スライドを映している
プロジェクターの電源を切る。

さっきよりも静かだと思う人?
って聞くとまた全員手が上がる。

部屋の換気扇のスイッチを切って
同じ質問をするとまた手が上がる。

最後にノートPCのスイッチを切って
同じ質問をするとまた手が上がる。

人間の感覚というのは、面白くて、
上質を知れば知るほど過敏になり、
小さな刺激の違いに気づくようになる。

空調において、送風機の数というのは
減らせば減らす分だけ上質な空間を
作ることができます。

高断熱で温度差の無い暮らしを
体験したことのある人とない人では
その快適性がどう違うのかを
想像する事すらできませんが、
音の無い暮らしをしたことの
ある人とない人でもまた同じ。

この静かだという物のレベルは、
よほど高性能なマイクで拾って
高性能な音響で再現しても、
感じ取ることは難しい。

だけどその空間に居れば分かる。
誰も言葉を発しない静かな空間で、
人の息遣いの音だとか、
ページをめくる音だけが
かすかに聞こえるとか。

子育て世代だと、家にノイズが
溢れているのでまだまだ
難しいですけども、
夫婦二人だけの暮らしに
なった時には、その
「無音」の質の高さは、
暮らしの質の高さになる。

また、ファンを使うという事は、
家に設備が増えるという事。

設備は必ずメンテが要ります。
後からかかるお金も増えていく。

つけるなとは言いませんが、
不要な所にあるのはもったいないし
強力過ぎてももったいない。

必要な所に必要な分だけ。

それが出来るようになるための
空調の計算になります。

もし、あなたの図面に、
この部屋には小屋裏からこうやって
ファンで冷気を送ります。

みたいな事が書いてあったり
説明を受けたりしたら、
で、この部屋は夏の平均的な
感じで何℃何%になるんです?
ものすごく暑い時には
何℃まで上がるんです?

ちゃんと計算されてます?

って聞いてしまってもいい。
99%以上の人は計算なんてしてないし
根拠なんて示せません。

だから、全館空調の失敗例は
全国に続々と登場してきます。

プロの皆さん、ちゃんとしようよ。
そして住まい手の皆さん、
難しいけども、ちゃんとしている
プロかどうかを見分けてください。

空調設計を数字の根拠で出せます?
って勇気をもって聞いちゃってください。

出せないけど今まではこれでそんなに
問題は起きませんでした。
って殆どの人が言うと思うけど、
基本が分かっていない人がイレギュラーな
事に取り組むと修復の難しい失敗を
してしまう事もあります。

どうぞお気をつけて。

#温熱は物理 #快適は設計でつくる #設備より建築

登録特典として、小冊子をpdfでプレゼント
+知って得するメルマガを毎日配信

メルマガ

メルマガに登録する

この記事を書いた人

代表取締役 森亨介

森 亨介(こうすけ)

Xアイコン facebookアイコン Instagramアイコン

国立岐阜工業高等専門学校建築学科卒業 建築環境工学を専攻する。
生涯コストが最も安くなる家を作る事を提唱し、普及に努めている。
凰建設株式会社代表取締役 一般社団法人ミライの住宅代表。
元パッシブハウスジャパン東海支部エリアリーダー